REBORN
いつの間にか捧げてた永遠 (獄ハル)
俺にとって本当に大事な人は、いつも隣にいたんだ。
姉キの結婚騒ぎの時、思ったんだ。
あの女の幸せの象徴のような純白のウェディングドレスを、あいつが着たら、それはもう似合いそうだと。
いつも以上にはしゃいで、明るく振舞って、笑顔を撒き散らすんだろうと。
もし本当にその時が来たとしたら…俺は、あいつの隣にいられるのだろうかと。
「ご結婚おめでとうございまぁす!!」
やけにテンションの高い司会の声が、披露宴の会場に木霊した。
今日は10代目の結婚式。
そう、10代目と…笹川の結婚式だ。
「悔しいか?」
「別に…悔しくなんか、ありません、よ」
俺は隣で拍手をしているハルに声を掛けた。涙を必死に堪えてるのが見え見えだ。
「悔しいのは、獄寺さんの方じゃないんですか?ツナさんが取られて。そりゃ右腕よりも、奥さんの方が大事ですもんね?」
拗ねた様に、唇を尖らせながらハルは呟いた。
らしくない。そう思ったけど、俺だって普段通りになんて振舞えない。
「んなこたぁ…もうずっと昔から分かってんだよ」
だから俺もそう吐き捨てた。正確にはそう自分に言い聞かせたんだ。
俺はもうずっと前から10代目を、10代目だけを見てきたんだ。
あのお方が、どれだけ笹川を大事に、大切にしているか、笹川を想って…どれだけあの方が心を傷めていたか…俺が一番良く知ってる。
「だから…」
「「だからこそ、あの人が幸せでいられれば、それでいいんだ」」
思わずハモッてしまって二人で顔を見合わせ、少し笑った。
ハルが今日、初めて笑った。
「やっぱり、獄寺さんもそう思ってたんですね」
「あったりめぇだ」
「ハルもです。ハルは二人とも大好きで、二人とも幸せになって欲しいんです。だから、ハルの幸せは…当分来なくてもいいんです」
そう言い残して、ハルは挨拶回りをしている笹川のトコロに駆けていった。
さっきまでは、あんなに泣きそうな顔をしてたのに。今じゃ誰よりも嬉しそうだ。
きっとあいつは誰よりもこの結婚を心から祝福している。
「獄寺くん」
後ろから肩を叩かれた。振り返ると、
「あっ、10代目!!ご結婚おめでとうございます」
「ありがとう。未だに実感が無いけどね」
少し眉を下げ、はにかみながら答える10代目は、昔の、出逢った頃のあの中学生の頃の10代目を思い出させた。
そう。俺も、ハルも、10代目も、あの頃からずっと…
「でも念願叶ったじゃないですか。俺も本当に嬉しいです」
「ありがとう。…でも、ハルには悪いことしちゃったな。折角俺なんかのこと好きでいてくれたのに…」
10代目の顔に少し影が落ちた。
…何て…何てどこまでもお優しい方なんだろう。
「そんなことないです。10代目が笑ってらっしゃれば、俺達は、みんな幸せです」
「フフッ相変わらずだね。ありがとう。じゃあ、ハルのこと、頼んだよ」
…それは一体どういう意味だろう?
そういや10代目が結婚しても大して俺は傷ついていない…以前の俺だったら有り得ないかもしれない。
ハルが辛そうにしているのが辛かった。
あいつが泣かないから、代わりに俺が泣きたくなった。
いつの間にかあいつの笑顔を見るのが楽しみになっていた。
…そうか、俺の大事な奴は、別にいるんだ。本当にすぐ傍に。
「ハル!!」
思わず大声を挙げてしまい、驚いた会場中がシーンとする。
「はひ!?なんです!?獄寺さん?」
目を丸くしながらハルが言った。驚きで手に持っていたグラスを落としそうだ。
俺は早足でハルに近付き、本当に目と鼻の先まで近付いた。
そして、
「結婚するぞ!!」
と言ってハルの腕を掴み、未だに状況が理解出来ていないハルを連れて、会場を後にした。
「…へ?」
「まだそこら辺にいんだろ。神父とか何とか」
「本気ですか!?」
「冗談でこんなことするわけねぇだろ」
「ハルはもっとロマンチックなプロポーズを夢見てたんですよ!?」
「あぁ!?てめぇ覚悟しとけよ。これからはいつでもロマンチックな毎日味わわせてやるよ」
「…そんなこと言って恥ずかしくないんですか?」
「うるせぇ」
一本新しい煙草を吸おうとすると、ハルに即座に取り上げられた。
まぁいいか。
ずっと笑っていて欲しい。
ずっと傍にいて欲しい。
そしてずっとお前と幸せを、分かち合いたんだ。
Title by "as far as I know"
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