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「キッド」

キラーが声をかけても、キッドは反応しない。

「キッド、いい加減にしろ」

語気を強めて言うが、やはり反応しない。

「キッド!!」

キッドの肩に手をかけ、無理に自分のほうに顔を向けさせた。
その顔は怒っているようで、どこか虚ろであった。

そして、その腕にすでに死んでいる女性が抱かれているのが見えた。

「なんだよ、キラー」
「もう放してやれ」

そう言うキラーに逆らい、キッドはさらに強く女性を抱いた。

「もう逝かせててやるんだ」
「行く?どこに行くっていうんだよ」
「海だ。海に抱かれ、その魂は安らかに還るんだ」
「…違う」

キッドは女性の肩に顔を埋めた。

「こいつは、おれとずっと一緒にいる。どこにも行かない。ずっと一緒だ」
「キッド、それではヒロインは」
「おれの隣にいるのが幸せ、って言った。どこにも行かせない」

だから放さない、と言わんばかりに女性をキツく抱き締める。

「…それは、生きているときの話だ」

キラー自身もあまり言いたくない言葉だった。

やはり、キッドに反応は無く、ただただ女性を抱き締めるだけだ。
諦めたキラーはキッドに言葉をかけるのをやめ、その場を離れた。

「すまん、ヒロイン」

キラーは宙に向かって一声かけると、歌を歌い出した。



キッドの耳にも、キラーの歌が入って来た。
すると、キッドは女性の頭を自分の胸に押しつけ、女性の耳をふさいだ。

「あれは幻聴だ。お前はまだここにいていいんだ。だから、どこにも行くな」



レクイエムは届かない

その魂は安らかになることなく

愛しい男から離れられない


Is she happy ?






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