PCの感情、
しゅん、と彼は目を伏せて言う。
ああー睫毛長いよこの子、男のくせに。
あれ?こいつ誰かに似てる…
つか「PC買い替える」がよっぽど堪えたのか。
この際[この男はPC説]を受け止める事にした。
「買い替えられるの嫌なの?」
「どうせ、僕を捨てるんでしょう」
「べ、別に…」
「スクラップだなんて御免です…」
ちらり、と俯いた彼の顔を覗いてみる。
彼は下唇を噛んで瞳に涙を溜めていた。
何時もの私なら「萌え」と言ってただろう。
でも今は、言わない事にした。
…彼の表情が本当に悲しそうだったから。
沈黙の中に彼はまた喋り出す。
「僕は見ていました」
「…?何を?」
「貴方が最新機種のPCを見ていた所です」
「……」
「僕はいらないんですかね」
「っ!そんな事無いよ」
「重いとか文句ばかり言ってたじゃないですか」
「それは…」
確かにそれはそうだ。
立ち上がるのも遅いし、
重くて大きい絵は描けない、
動画は途中で止まったり、
ずっと買い替えたいと思ってた。
「それとこれとは別だよ」
「何が別なんですか」
彼はぽつぽつと下を向いたまま喋る。
顔ぐらい上げれば良いのに。
涙とか見られるの嫌なのかな…
あれ、PCでも涙なんて流すもんなの?
とか色んな事が頭に浮かんだ
が、今はそれ所では無いのだ。
「貴方に人の心が在るなら話は別だって意味よ」
「人の心ではありません、多分、プログラム」
「じゃあ何で泣いてんの?本当にプログラム?」
「なっ…泣いてなんかいませんよ!」
バッ、と顔を上げる彼。
綺麗な銀色の髪が舞い上がるのが分かった。
でもやっぱり顔を覗くと彼は泣いてた。
それに気付くと彼はフイっと後ろを向いた。
こいつもしかして本当に馬鹿なのか?
顔上げれば泣いてるってバレるじゃないか。
「ほら、素直になりなよ私のPC君」
「す、スクラップにでも何でもすれば良いです!」
「捨てやしない、分かった、買い替えない」
スクッ、と立って勢いよく言ってやった。
私がそうするとそっぽ向いてた彼は此方を向いた。
キラキラと目が輝いてた(様な気がした)
あれ、そんなに嬉しいのか?
そりゃそうか、スクラップって死ぬ訳だし。
私もこんな奴を捨てる気にはなれないし…
そんな事を思いながら私は彼をじろじろ見た。
すると、彼がパシッ、と私の手を両手で握って一言。
「だ、大好きですご主人!」
「はあ?」
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