朝に目を覚ますといつも、笹塚衛士の存在が脳裏をかすめる。 彼が数週間前に殉職したからだ。 最近世間を騒がせているSIX事件。後に、度々お世話になっている弥子ちゃんから聞いた話によると、その犯人に敗れたらしい。あの人が死んだ翌日、笛吹さんから直接訃報を知らされた。 何にも言わなくてもお互いにわかりあえる、それが、私と彼の仲であり確かな絆であった。 古い友人というわけではなかったけれど、同期として同じ部署に配属されたから自然と交流が深かったのか、もしくは私たちの性格的に相性が良かったからなのかもしれない。 ポーカーフェイスで全く食えない笹塚と、感情の起伏が激しい私。性格は正反対で、よく笛吹さんからは「お前らの仲いい理由が理解出来ん」とぼやかれたけれど、私たちはあれで上手くいっていた。 性格が違うが故にぶつかり合うこともあった。大抵は私が一方的にあいつに文句を言いはじめるのがきっかけだった。そうすると奴は困ったように眉根を寄せた後、ぐしゃりと私の頭を撫でるのだ。子供扱いされているようで何度も文句を言えど、実際に私はあいつの温かな手のひらに絆されて結局はいつも通りの調子に戻っていた。 それが、今までの私の日常。 私の"当たり前"だった。 だけど隣に彼はもういない。 あの大きな手の優しい温もりも、不器用な微かな微笑みも、笹塚衛士はこの世界のどこにもいないのだ。 きみはまだ彼の夢を見る 夢の内容は思い出せない。けれどそれは、ひどく優しい色をしている気がした。 090220.#りい子 "ハッピーエンドの向こう側"へ提出 |