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おれを嫌いになってくれ。
04
秋塚は教師でありながら生徒達からかっこいいと評判であり、本人も満更でもないのか当然のように受けとめている。

口が悪くとても教師とは思えないが、去年生徒会で話す機会があり、気が合ったことからいまでも連絡を取ることがあった。

生徒会から遠退いた縁司が、再び生徒会室で書類と格闘しているのは、そんな秋塚から手伝えと連絡がきたからだ。

視線は書類に落としたまま、秋塚が得意気に口を開く。

「学校行って免許取れば、だれでも念願の教師様だ。世も末だな」
「先生が言うと、説得力ありますね」

教師の鏡とはほど遠い男だが、いっこうに減らない書類の山を受けてみずから動くのだから、責任というものは持ち合わせているのだろう。

しかし本来であれば、これは生徒会に任された仕事である。
全校に、そしてほかの教職員に知られぬよう、縁司は夜の七時から十時までと生徒が校内にいなくなる時間を見計らって生徒会室に来ていた。

「俺が生徒会室にいるのがバレたら反感買うこと請け合いなんですから、少しは気使ってくださいよ」
「二回も生徒会のイスを蹴った縁司が悪い。お前のせいで、溝落が会長やることになったんだからな」

嘆くふりをして抗議をしてみたが、秋塚にはまったく効かなかった。
それどころか、逆に痛いところを突かれてしまう。

去年縁司が会計を辞めたために、生徒会は一人不足の状態で残りの任期をまっとうすることになった。
溝落も先輩方も優秀な人材であるため問題は起こらなかったが、それでも予定は狂っただろう。

途中で辞めた身だけに、もう生徒会とは関係ないと思っていたのだが、その目論見は甘かった。
再度の生徒会長への任命に、縁司は当然辞退したが、その穴埋めとして溝落が会長をやることになってしまった。

縁司は疲れてきた手を休め、ハンコをスタンプ台に置く。

「溝落はいいんですよ。あいつ目立ちたがりだから、むしろ生徒会長になれて満足してましたよ」
「これで仕事をきっちりやってくれれば、俺も文句はねえんだがな」

口元をひくつかせた秋塚に、縁司はやぶ蛇だったかと肩をすくめる。
すでに言ってしまったことは仕方がない。

それよりも、と気になっていた話題を秋塚に振ることにした。

「先生は風間って知ってます?今話題の」


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あきゅろす。
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