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おれを嫌いになってくれ。
03
縁司が通う高校は全寮制の男子校である。
近隣に娯楽は少なく、閉鎖的であるため同性との恋愛を楽しむ者が多く、とくに人気を集める生徒には親衛隊がある。

少しでも生徒達の楽しみを引き出そうというのか、学校の行事として定期的に抱きたい抱かれたい男ランキングが開催され、生徒会と風紀委員会はランキング上位から順に選出される。
通常、役員に選ばれれば拒否権はなく、なかば強制的にやらなければいけないのだが、その通例を覆したのが今年三年に進級した縁司公弘であった。

縁司は去年、二年のとき生徒会会計として選ばれたものの、それを任期途中で退任。そして今年抱かれたい男ランキングで一位となって生徒会長に任命されるも、学園長に面と向かって辞退の意思を突き付けた。

生徒会にいたときは親衛隊もあったが、それも解散させてしまった。
いまは部にも所属しておらず、気ままな帰宅部として寮と学校を往復している。

だからといって、面倒事を押し付けてもいいというわけではなかった。

「ったく、生徒会が仕事をしないからって、俺をかり出さないでくださいよ」
「うるせえ。どうせヒマだろ。手伝え」
「ヒマって…」

役員に割り当てられた机でなく、中央のテーブルに着いて縁司は受領印のハンコを押していた。書類には各部の予算案や新しいレクリエーションの提案、いじめの密告など、部外者である縁司が目にするのははばかられるような事案ばかりであった。

食堂での一件以来、風間は全校生徒の怒りを買った。
廊下を歩けば風間への悪態がそこかしこで聞かれ、生徒会役員の親衛隊にいたっては烈火のごとく怒りに燃えている。

それまで生徒会にそこまでの興味を抱いていなかった少数の生徒も、風間の言動のなにが障るのか親衛隊に同情的となっていた。
縁司にしてみれば、よくもそこまで情熱を燃やせるものだと感心するばかりだ。

校内の反応を重く見てか、風紀委員会は交替で風間の周辺をうろつき、いつなんどき、いじめに発展してもいいように警戒を怠らない。

生徒会役員も風間が心配なのか、彼に張り付いて遊んでばかりいる。
生徒会の仕事もせずに。

「これってバレたらヤバいんじゃないですか?」
「あ? やべえよ。だから他人に話すなよ」
「なんでこの人、教師なんだか…」

ため息を吐く縁司の対角で、髪を染め、ホストのように髪を立たせた秋塚が書類にペンを走らせていた。
ぶつくさ言いながらも、二人とも手は動かす。

それもこれも風間との時間を大切にするあまり、自分達の仕事である生徒会業務をしなくなった役員達に非があった。


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あきゅろす。
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