おれを嫌いになってくれ。
02
―― そして現在。
転入生がやってきた。
雑談のような華々しさでなく、怒りと悲鳴混じりの騒々しさが食堂を満たしていた。
「あれが噂の転入生か」
生徒会と転入生のいるテーブルとは離れたすみで、縁司は一人昼食をつついていた。
黒目黒髪のすらりとした高身長に合った長い足を組み、その薄い唇に笑みを浮かべる。
転入生こと、風間の噂は聞いていた。
この全寮制男子校に来たその日に副会長と仲良くなり、いま食堂でほかの生徒会役員とも親睦を深めた。その結果が、先ほど公衆の面前で行われた会長から風間への濃厚なキス。
校内の人気を集める生徒会には親衛隊すら存在する。
当然それを目の当たりにした生徒達からは悲鳴があがり、食堂内は収集がつけられないほどの騒ぎとなってしまっていた。
生徒達の好意を一身に集める美貌の生徒会も、同じく騒がれるほどの顔立ちの縁司からしてみれば、興味もないただの人。
ほかの生徒達と一緒になって騒ぐ気持ちも、風間を恨む気持ちも一切わかない。
しかし風間という存在は、非常に使えるのではないだろうか――。
縁司は騒々しさをシャットダウンするように瞼を閉じる。
(風間が風紀委員長を落としてくれれば)
口角は笑いを堪えるように、くいっと上がった。
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