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おれを嫌いになってくれ。
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縁司はテーブルの引き出しから水色のノートを取り出し、かかげてみせた。

「ノートを置き忘れていてね。思い出してよかったよ」

黒く細い髪が揺れ、理知的な瞳が笑みを帯びる。
動作も優雅で隙がない。そこにいるだけで華があるとは、縁司のことをいうのだ。

「ところでみんな集まって、どうしたの?」

そんな彼をぼうっと見惚れていた隊員達は、やっと正気付いたように身を乗り出した。

「縁司さんはどう思います!?転入生の風間のことを!」
「まさか、あれが良いなんて言わないですよね…?」

隊員達を制止する間もなかった。
親衛隊の内情に触れることまで洩らす彼らに、少年はいよいよ腹をくくらねばならなくなった。

「小仲くんは真っ直ぐだよね。こうと思ったら、どこまでも突き進んでしまう」

縁司が薄い唇を開き、だれにともなく見解を述べる。
去年の段階で生徒会を退いた縁司が、自分の存在を知っていると思わなかったが、ふいに彼の視線が当てられた。

「小仲くんは自由奔放だ。たとえその道が間違っていようとも、気付かず進んでしまう」
「……」
「きみが隊長だね」

音をたて、縁司の足が少年のほうへ向かう。
見上げるほどの長身だ。顔が小さく足が長い。どこを取っても欠点などない。

縁司は、完璧だ。

「隊長ならば小仲くんが間違った道に行ったとき、正してあげなきゃいけないよ」
「…ぼくが…ですか…?」
「それが隊長の役目であり、きみ達、親衛隊の存在意義だ」

縁司の黒い瞳が近付き、指が少年の頬にかかる。
強い求心力を持つ彼に、あらがえるものなどいなかった。

「やらなけらばいけないことは…わかるね?」
「風間を…排除する」

隊員達の士気が高まる。

「小仲様を…救ってみせる」

縁司の口元に、笑みが浮かんだ。


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