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リミット
07
叶うのであれば、快も彼らとともにどこかへ消えてしまいたい。もしくはアルバイトがあるからと、ここは見逃してくれないだろうか。

(そんなの…ムリだよな…)

しかし大人しくしていてはアルバイトの時間に遅れ、マスター一人で開店しなければいけなくなる。
それでなくとも少人数でやっているリミットで、それでは店を回せない。

快は覚悟を決めた。

「まさかこんなところで会うとは思わなかったぜ」

伸也は口元を上げるが、追求の手を緩めるつもりはないらしい。

快は胸を動かさないように深呼吸すると、表情筋に力を込めた。

伸也の背後にあるビルのまえで目をとめると、驚いた声を出す。

「あっ…!宏磨っ…!?」
「なに…!?」

突然声を上げた快に驚き、伸也も快の視線を辿る。
その隙を逃すわけにいかなかった。

「…って、おい、宏磨なんかいないじゃねえ…か」

後ろを確認して快へ視線を戻したころには、そこにあったはずの姿は消えていた。

「え、快…!?」

呆気に取られ、次に伸也が快の姿をとらえたのは、入り組んだ路地へと消えてしまうところであった。

伸也は細く溜め息を吐き、してやられた思いに髪を掻き上げる。
あそこまで追い詰めておきながら、まさか逃げられるとは考えていなかった。

「やってくれるな」

それも相手は飲み屋のバーテン、しかもまだ高校生ときた。
自分が油断し過ぎていたのか。
それとも言いなりになると見せかけて、逃げる機会を作った快が切れ者であったのか。

「それにしても、宏磨…ね」

快がその名前を出したのは正解だったと言えるだろう。あわや強襲かと思い、快から意識をそらしてしまった。

見事、快の作戦勝ち。むしろよく宏磨の名前が出てきたものだと思う。

「聞きたいことがまた増えたな」

逃げられたのならばわざわざ追い掛けることはない。快の行き先はわかっているのだから。


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