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リミット
18
伸也は足早でやって来ると、快を引き寄せ自身の背後に押しやった。
伸也と伊知が対面する。

(まさかこの人と伊知が鉢合うなんて…)

快から伸也の表情を窺い知ることはできない。
しかし快を守るようにそびえ立った背中は、罪悪感を覚えるほどたくましかった。

眼差しで牽制し合うのを止め、さきに口を開いたのは伸也であった。

「こんなところで会うとは思わなかったぜ。蘭華町に行くところか?」
「お前に教える義理はないな。敵と馴れ合うなんて馬鹿馬鹿しい」

対する伊知は、口調すら変わっていた。

「それは俺も同感だな」

氷のように冷たくなった伊知の視線を受け止め、それでも伸也は笑ってみせた。眼差しは鋭く伊知へと注がれているものの、年上の分だけ余裕が見えた。
しかし油断をすれば伊知から足元をすくわれるのは、伸也とてわかっているはずだ。
伊知は北区チームの副トップで、切れ者としてその名を広めているからだ。

北区は今、南区にケンカを仕掛けるために準備を進めている。
一般には出回っていない情報であったが、南区と北区の重要人物である伸也と伊知は当然そのことを知っている。そんな二人が顔を合わせてしまえば、互いに見過ごすわけにいかないのだろう。

伸也の背後に隠された快と、伊知の視線が絡む。ここで二人の繋がりを伸也に気付かれるにはいかなかった。

伊知は冷酷な笑いを浮かべ、快を嘲るように鼻を鳴らした。

「だれかれ構わず守ってやろうっていうの?南区のリーダーは噂に違わずお人好しだね」
「噂を集めて、俺のリサーチかよ。お前らも必死だな」

にやりと笑った伸也に、伊知が唇を噛む。
挑発しようとした結果が、無様に言い負かされてしまったのだ。

(伸也さんはすごい…)

彼を味方に付ければ、たしかに身の安全は保証される。南区の住人が彼を慕う気持ちはわかる。
しかし敵に回してしまえば、伸也ほどの脅威はないだろう。

伊知達はそれをわかっているのか。

もう止めろ。そんな快の願いもむなしく、伊知はさらなる攻撃を仕掛け始めた。


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あきゅろす。
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