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リミット
14
金髪の生徒――道弥のあとから、昨夜も一緒にいた男達が追い付いた。

「道弥、チビっ子掴まえたー?」

動きに合わせて柔らかな髪を肩のうえで揺らしながら、線の細い男が顔を見せた。道弥と比べると限りなく白に近い金髪である。
その背後にいる男はうって変わって口を開く様子がない。昨夜もずっと黙っていた。口数が少ないのかもしれない。

線の細い男が、快を見付けて目を見開く。そして盛大に笑い出した。

「ぶわっはっはー!もうバレてやんのー!」
「令、黙ってろ…」

道弥が疲れたように膝に両手をつく。
二人の態度を見ていれば、同じ高校だと知ったうえで、快を狙ったのだと簡単に想像がついた。

制服姿の快をガキだとあなどりながら、その実、自分達も高校生だったのだ。

「ありえねえ…」
「快、知り合いか?」

危険は去ったと判断し、司が壁から背を離す。
彼に顔を向けた快だったが、周囲のざわつきが耳に届いた。

女生徒達が固まって様子を窺い、男子生徒達は何度も振り返りながら廊下を歩いていく。
完全に見せ物状態だ。

「こいつら、よく屋上でサボってる連中だろ?」
「司、知ってるのか?」
「ああ。放課後も校内ふらふらしてるからな」

帰宅部であり、用事がなければすぐに帰ってしまう快には、知り得ない情報だ。

道弥じゃないが、快まで力が抜けてきた。絡まれたのが司だったら、出会い頭にうまく彼らを撃退できたはずだ。

ともかく廊下のド真ん中でいつまでも注目を集めているわけにはいかない。

(そもそもなんでこんなことになったんだ…?)

記憶を辿る快の腹に、それを思い出させるようにもう一度タックルがかまされた。

「助けてください…!!」

存在そのものを忘れていた。
快とぶつかった生徒は床に転がった体勢から、快にしがみついてきていた。

「助けてって、あんただれだよ!?」
「あ!忘れてた、このクソチビ!」

快の言葉に、道弥が勢いよく顔をあげる。
すると快にしがみつく手に、ますます力がこもった。

「僕はっ…三年の菊地 葉っ…!お願い、この人達から助けてっ…!」

すがるように見開かれた目は頼りなく揺れ、年上というわりに幼さを覚える。

「三年って…先輩じゃないっすか。俺が助けられることなんてなにも…」
「でもきみしか頼れる人がいないんだっ…!」

快は周りに目を走らせるが、視線が合った途端にそらされてしまう。

(訳ありか――?)


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