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俺の元彼
07
(恥ずかしいやつ…!)

俺は唇をかみ、頬が赤くなるのを堪える。だが笑みを増した結城をみれば、照れているのはバレバレであった。

二人は家へと続く長い坂道をのぼる。
その道中、結城が口を開いた。

「再来週、クリスマスだよね。予定あいてる?」
「…あいてるよ」

俺は足下を見ながら、ぶっきらぼうに答える。
その日は恋人たちの日だ。ほかに予定を入れているはずがない。

結城はそれを承知で口にしている。

「じゃあクリスマスは俺と過ごそう。ごはん食べて、朝まで一緒にいよう」
「……」

それは泊まろうというお誘いなのか、ずっと俺と一緒にいたいという口説き文句なのか。

(すっげえ…恥ずかしい)

どちらなのかはわからないが、甘い文句なのに変わりはなかった。

日頃から甘い言葉ばかり言う結城でも、今日は一段とすごい。

初めて二人っきりで過ごすクリスマス。

期待して、いいのだろうか。

「恵多…いや?」
「いや…じゃ…ない」

か細く返事をすれば、結城は目尻をさげうれしそうに笑う。

そんな顔、するな…。

「楽しみだね、クリスマス」
「まあ…」

クリスマスもそうだが、そのまえに一大イベントがある。
来週にひかえた結城の誕生日だ。
なにをプレゼントしよう。なにをあげればよろこぶだろう。

(幼馴染みの腕の見せどころだよな)

伊達に長い時間を共有してきたわけではないのだ。結城の好みは大方把握している。
だが恋人という立場で祝うのは初めてで、緊張があった。

絶対よろこばせてみせるから。

隣を歩く結城の存在を強く感じながら、俺は改めて決意する。

それが別れの始まりだと、そのときの俺は知らぬまま――。


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