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俺の元彼
01
高校生の恋愛なんて、所詮おままごとだ。

「ねーなに飲んでるのー?」
「ソルティードッグ」
「一口飲ませてー!」
「いいよ」

そう広くもない店内で、壁際にならんだテーブル席には三人の女子が黄色い声をあげていた。
彼女らの気をひくのは、髪を茶色に染め、あか抜けた風貌の背の高い男だ。

(…ばからし)

俺はその光景を見るとはなしに眺め、口許にグレープサワーをつけた。

先週大学の入学式を終え、晴れて大学一年生となった、俺、深谷恵多は親睦会と称した飲み会に出席していた。
同じ経済学の一年で、進学を機に上京してきたのも多いなか、俺は生まれからこれまでずっと東京にいる。
そして、それはあの席で女に囲まれた男も同じこと。

「昔は…あんなんじゃなかった…」

口にしてみると情けなさが込みあがる。
変わりはてた彼、本多結城の過去を知るのは、ここには俺しかいなかった。

俺と結城は幼馴染みだった。
家が近く幼稚園から一緒であったため、よく互いの家を行き来していた。
初めは友情だと思っていた想いが、恋情へと変化したのはいつからだろう。

それは結城としても同じであったのか、俺たちは高校二年のときから三年の冬まで付き合っていた。
親や友達は知らない。
二人だけの、秘密の関係だった。

付き合いたてのころはうまくいっていたと思う。
学校の登下校や休みの日、時間を見つけては会い、セックスだってした。
しあわせだった。
あの頃は。

「おいしー!結城も私の飲んでみなよー!」
「いいの?間接キスになっちゃうけど」
「やだー!そんなの気にするわけないじゃーん」

そう言いつつも恥ずかしそうにもじもじする女を見れば、結城を意識しているのは明らかであった。


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あきゅろす。
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