俺の元彼
14
「恵多…、俺は恵多が好きだ」
ぎゅっと抱きしめられる。
「ちゃんと説明しなくてごめん…。悲しい想いをさせてごめん…。もう恵多につらい想いなんてさせないから…」
「……」
「俺と…やり直してほしい」
胸が熱くなった。
涙がすぐそこまできている。
「お前は…、俺なんかより女がいいんだと…。俺…飽きられたんだと…」
震えながら告げたら、おでこにこつ、と衝撃をうけた。
「俺が大切に思うのは恵多だけだよ…。恵多しか、優しくしたいと思えない」
「ほんと…かよ?」
「本当だよ。女の子たちに対する態度でわからなかった…?」
「わかるか…、そんなん」
鼻がぐすりと鳴る。
女々しかったが、それでもよかった。
結城にはもう弱いところも、みっともないところも全部見られているから。
(もう…離したくないっ…)
俺は彼の背に腕をまわし、肩口に顔をうめる。
懐かしい彼の匂いに、涙が水滴のように落ちた。
「する。…やり直す」
「恵多…」
「俺も…結城が好き」
喧騒から一本それた、暗く静かな路地裏。
俺たちはかたく抱きしめあい、互いの体温を再確認した。
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