俺の元彼
13
「俺が女の子たちと飲んでたこと…?でもあれは、むこうが勝手に居着いちゃっただけで、深い意味は…」
「家に女呼んでただろ!」
検討違いな言い訳を述べる結城へ、俺は誤魔化しは許さないとばかりにつきつけた。
「お前の誕生日を一緒に祝った次の日、知らない女を家に呼んでただろ…!!」
「え――?」
「俺は見たんだからなっ…!言い訳なんかできると思うな…!!」
結城を睨みながら告げると、たっぷり十数秒、まじまじと顔をみられる。
「なにそれ…」
「はっ…!今さら思い知っても遅いん…」
「俺と恵多は…誤解して別れちゃったの…?」
「……、は?誤解…?」
今度は俺が彼を凝視する番だった。
(誤解って…なに…?)
結城の顔を口を開けて見つめていると、結城がまたため息をついた。
疲れたような、しかし安心したような温かさがあった。
「恵多が見たっていうのは、ただの女友達。家族がいる部屋にしかその子をあげてないし、俺の部屋になんてもちろん入れてないよ」
「……それって…、家族公認ってことじゃないのか…?」
俺が呟くと、結城は小さく吹きだした。
「バカだな、恵多。その子にはケーキのつくり方を教わってたんだよ」
「……ケーキ?」
「そう」
結城はその目に、もの寂しさをたたえる。
「クリスマスに手作りのケーキを、恵多に食べてもらいたかったんだ」
「え…?」
頭がすぐに追いつかない。
なんだそれは。
それは…まるで…。
「俺の…ため…?」
掠れた声が、のどを過ぎる。
信じられない。というより、信じたくなかった。
「恋人になってから初めてのクリスマスだったから、特別なことがしたくて…」
「……」
「でも…慣れないことはするもんじゃないね」
結城は手を伸ばし、俺の後ろ頭を慈しむように撫でる。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!