俺の元彼 09 首元がしまり、苦しそうな小熊が、それでも怒りをあらわに反論する。 「飲み会で酒に酔うのなんか当たり前だろ!変な言いがかり立てんじゃねえよ!」 「お前が何杯も飲ませて酔わせたんだろ…!潰れた恵多に、なにをしようとした…!?俺が声をかけなきゃどこに連れていこうとしたんだよ…!?」 「…っ…!」 そこまで言われると、小熊が急に押し黙った。 顔をひきつらせ、目まぐるしく視線をさ迷わせる。 「…な、なんのことだよ…。深谷が酔ったから…休ませてやろうと…」 「休ませる?へえ…、どこで?」 結城が語気を緩めず、そのまま問いつめにかかる。 ここまで激情のままに話す結城は、初めてかもしれない。 いや、幼馴染みの俺が知らないんだから…初めてだ。 「それは…近くの店で…」 言いにくそうに答える小熊は、明らかにウソをついていた。 それは唖然としていた女の子や、ほかの同級生の目にも明らかで、場が異様な空気に包まれる。 男が男を、下心を持って酔い潰したのだ。当然だ。 「…恵多は俺がもらう」 結城が揺るぎない眼差しで俺を見つめる。 どきりとした。 なんだ、その目は。 「おい…!待てよ…!」 小熊が叫ぶのも構わず、結城はこちらへ歩みよると俺の腕を彼の肩にまわす。 俺が慌てるのすら気に留めず、そのまま俺を抱えおこした。 結城の顔が、すぐ横にある。 「お前こそ深谷を狙ってんじゃないのかよ!話したこともねえ他人のくせに、どこ連れてく気だ!?」 結城が外へと向けていた足を止める。 胸がどきどきと高鳴っていた。 「他人じゃない。幼馴染みだから」 あとにした店内は、水を打ったように静まりかえっていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |