[携帯モード] [URL送信]

I'm FAKER
08
面倒は嫌いといいながらも、面倒事を引寄せてしまうのは、なんの因果だろう。

(朝から教室に来ることなんかなかったじゃねえかよ)

だから油断した。
人目もはばからず、川澄に抱きついた。
クラスメートとは笠井も話すため、それに深い意味はないと彼らはわかっているのだ。

しかしもっと気をまわしておくべきであった。
笠井は苦い表情を押しかくし、谷垣へ手をあげた。もとより、彼には用があった。

「おっすー。今日は早いのねー。そんなに純ちゃんに会いたかったのー?」
「笠井…」
「谷垣、おはよ!」

谷垣は怒りで荒げそうになる声を押さえ、低く唸った。怒りのオーラが見えるようだ。
それでも川澄のまえで我を忘れまいとするところがいじらしい。

「ちょうどよかったー。谷垣に用があったんだよねー」

笠井は手をひらひらと振り、なにもなかったかのように取り繕った。
ここは先手必勝だ。

「報告したいことがありましてー。じつは俺ー…」

笑みを堪えきれず、楽しげに口元が歪む。
これを彼へ告げるために、きのうがあったのだ。

「彼氏ができましたー。しかもハニーじゃなくて、ダーリン」

谷垣が驚いたように瞳を見開く。
これには川澄も、なりゆきを窺っていたクラスメートも驚いた。
周囲からざわざわと声があがる。

「てめえ…ウソついてんじゃねえぞ。なんだよ、ダーリンって」
「本当ですー。俺より背が高くて、たくましい身体をしたダーリンだよ」

予想通りの反応にしてやったりとほくそ笑んだ。

敵対心を燃やしてくる谷垣への対抗策がこれであった。
校内で彼氏をつくる。かつ、ネコになる。

谷垣が睨んでくる理由の一つとして、笠井がタチであることが起因していたであろう。
ほかの男に対し、笠井が抱かれる立場になれば、谷垣の溜飲も多少はさがるはずだ。
末永くダーリンと仲よくやってくれ、と言ってくれればさらに万々歳だ。

「本当…なのか…?」

谷垣は眉をひそめ、探るように見つめてくる。
川澄たちも同じ心境のようで、笠井の言葉を固唾をのんで待っていた。

笠井はその唇に極上の笑みを浮かべる。

「本当だよ。今日のお昼も一緒に食べるからー」

クラスメートが悲鳴のような声をあげた。それが歓喜なのか絶叫なのかわからないまま、驚いた表情をする谷垣に満足していた。


[*前へ][次へ#]

9/84ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!