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I'm FAKER
07
休みが終わって月曜日。
寮生活のため相も変わらずな顔ぶれで、クラスメートは朝のあいさつをかわしていた。

「おっすー純ちゃーん」

まえの席の生徒と談笑をしていた川澄が、呼ばれてこちらへ顔をむける。

「修介、おはよ!」

はつらつとした瞳が明るく輝いた。
川澄純汰は丸っこい大きな瞳をした、友だちの多いクラスメートであった。
だれとでも気さくに話せる性格ゆえだが、そのせいで谷垣に好かれたのかと思うと気の毒になってくる。
本人がまったく頓着していないのが、またすごいところだ。

「純ちゃーん、数学の答え見せてー」

笠井はうしろから抱きつき、小さな川澄に覆いかぶさるようにしてかわいくねだる。二人のこんな光景も、教室では日常風景であった。

「また宿題やってこなかったのか?」
「ほら俺ってばさー、生徒会があるからー」
「寝坊して遅刻ばかりなのに?」

思わぬ反撃をくらい、笠井の眉間にしわがよる。
笠井は内心で舌打ちした。情報の発信源は、間違いなく谷垣だった。

「俺にもプライベートってものがあるんですー。てかなんなのー、谷垣とうまくやってるのー?」
「うーん…うまくっていうか…」

笠井のつっこみに、川澄はまじめな顔で考える。

はきはきとしていて、かつ素直なところに谷垣は惹かれたのかもな、と笠井は他人事のように思った。
川澄のそういうところは、笠井も気に入っていたからだ。

「夜、一緒にメシ食ったよ」
「それで?」
「風呂に入るからってわかれたけど」

笠井は二の句が告げなくなった。

好きな子と手すら握れない童貞か。
そんな谷垣のあまりの初々しさに、呆れを通りこして感動する。

(川澄と会うまでは、セフレをとっかえひっかえしてたくせに)

谷垣の変わりようは、一目瞭然であった。
だれから見ても恋をする男そのものの谷垣に、彼のセフレたちも涙ながらに身をひいたという話しだ。

谷垣とは仲がいいとはお世辞にもいえないが、そこだけは尊敬していた。

(俺なら、まずなれない)

川澄を抱きしめながら、笠井は冷めた瞳でつぶやく。

身体は繋いでも、心までは渡せない。

数少ないセフレとも後腐れなくやってきた。
俺は、面倒事はごめんなんだ。

そのとき、廊下が騒がしくなる。
教室の戸口から長身の頭がのぞき、笠井は川澄を開放した。鋭い視線がこちらへ突き刺さっている。

「あれー谷垣じゃーん」

わざと明るい声音でいってみたが、状況はかんばしくなかった。

笠井の抱擁を目撃したらしい谷垣が、空気をきるようにして教室へ入ってくる。

三人の関係を知っている周囲からの、心配げな眼差しがうっとうしかった。


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