I'm FAKER
06
ばしゃばしゃと水の跳ねる音がする。
洗っていた顔を彼があげるタイミングで、笠井は郷のものと思しきタオルをさしだした。
「どーぞ」
にっこり笑顔とともに言ってやる。
人がいるとは思っていなかったのだろう。
郷はわずかに瞳を大きくするも、それ以上の反応は見せることなくタオルを受けとった。
(愛想ないねー)
笠井は笑いが込みあがるのをのどの奥で押し殺した。
面をつけていた髪はわずかに乱れ、愛想というものがない眼差しからは堅物な印象をうける。
身長が190センチ近くあるようで、身長にみあったたくましい身体をしていた。
綺麗もの揃いの生徒会には及ばないが、クラスではかっこいいといわれるタイプであろう。
「なに?」
じろじろ見すぎていたのか、郷から低い声で問いかけられる。
やはりぶっきらぼうで、笠井にたいして遠慮がない。
笠井は腕を組むと、水飲み場に寄りかかった。
「ねえ…郷くん」
遠慮を知らない強い眼差しが、笠井へ向けられる。
笠井はゆっくりと唇を開いた。
「俺と、付き合わない?」
それは疑問系であって、疑問系じゃなかった。
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