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I'm FAKER
02
谷垣とのいざこざの原因は同学年である一人の生徒にあった。

笠井と同じ、二年四組の川澄純汰。
クラスで仲良くしていた彼に、谷垣が恋をしたことですべては始まったのである。

(それまでは谷垣ともほどほどの関係を築いてたんだけど)

そのころのことを懐かしく思いながら、笠井はあいている席へ腰かけた。
生徒会室の真ん中を占拠する長テーブルは、六人がけで内三席が埋まっている。もちろん生徒会室へ来たのは笠井が最後であった。

谷垣と対角にある席に座ると、となりの守崎由貴が身をのりだしてきた。
ピアスがならぶ笠井の耳元へ、唇を寄せる。

「来た早々、やってくれるね。谷垣も修ちゃんも」

小声で耳打ちしてきた守崎の声音ははずんでおり、二人のいざこざをおもしろがっているのが滲みでていた。
女のように柔らかな顔立ちをしている彼は案外毒舌であり、先日も自分よりガタイのいい男に告白され、相手を泣かせたという強者だ。

「俺じゃなくって、谷垣がつっかかってくるんだよ。ゆきっちも見てたでしょー」

苦い表情をつくりながら、笠井も小声でかえす。
裏表のない守崎とは変な気を使う必要がなく、あだ名で呼びあう仲だ。

「そうだけど。楽しませてくれるよ、二人は。いっそ純汰を寝とっちゃえば?」
「やめてよ、そういう冗談…」

今でさえなにかと食ってかかられるのだ。そんなことをすれば取っ組み合いのケンカになるのは間違いない。

笠井はげんなりと返し、会計にわりあてられた書類を手にとる。

谷垣のとなりで黙々と仕事をこなす副会長の三神とのこの四人で、生徒会をまわしていた。

選出方法に推薦というものがあるためか、今年度推薦で選ばれた生徒会役員は四人とも顔がよかった。

会長である谷垣は背が高く荒々しい雰囲気がたまらないと評判であるし、副会長の三神は口数が少なくクールビューティーだと騒がれている。
書類の守崎は女のような顔に似合わず物言いがはっきりしており、木陰から見守るファンを完全に騙している。

そして会計をする笠井だ。
緩い空気としなやかな体つき、だれにでも分け隔てなく接しフレンドリーだと人気が高い。
しかしその理由が、仲良くしているようでバリアをはっているだけだと知っているのは、生徒会の面々くらいであろう。

物心ついたときには他人から好かれ、ちやほやされてきた。幼稚園に入れば告白され幼いころからチョコまでもらう始末だ。
だが他人から好かれるというのは良いもんじゃない。

謂われのないねたみを買うし、見に覚えのない噂を流される。
知らない女から彼女づらをされることも多々あった。
笠井をとりあって女同士が争い、かと思えば男から犯されそうになる。
笠井はヘテロであったはずだが、醜い女の顔をみるうちに恋愛ごとそのものがどうでもよくなった。言い寄ってくる女から好みの女を抱いて、性欲を発散させるくらいだ。
この男子校にきてからは男を抱く機会も抱かれる機会も山ほどあったが、抱いたことはあっても抱かれたことは一度もない。こだわりがあるわけではないが、痛そうだから。


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あきゅろす。
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