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I'm FAKER
01
笠井修介。高校二年、十七歳。
髪は白に近い金色。身長174センチ。
ブレザーは適当に着崩し、お気に入りの革紐のシルバーアクセサリーをつけている。

まあ一言でいえば、非常にモテる。





日曜の午後、笠井は生徒会室へ続く廊下を歩いていた。

(かったりぃ…)

せっかくの休日だというのに、生徒会の仕事で潰されるのはたまらない。
こういうとき、全寮制というのは厄介だ。

笠井が通う高校は全寮制の男子校であり、いわゆる男の園だ。同性同士で恋愛し、友情も育む。
顔が良ければファンができるし、校内で告白が行われるのもよくある光景だ。
それが日常であるから別段不思議と思わない。
笠井の場合は共学校へ行ったところでモテただろうから、なんてことはない校風であった。

目前に生徒会室が現れる。
不機嫌に強張った頬を弛緩させ、笠井は緩い笑みを浮かべ扉を開けた。

「はおー。やってるー?」

我ながら気の抜けた声をかければ会長である谷垣から鋭い視線が飛んできた。彼とはここ最近、緊張状態が続いているのだ。

「てめえ遅刻だぞ。今が何時だと思ってる」
「んー二時半?ちょっとゆっくりしすぎちゃったねー」
「てめえ舐めてんのか!」

ふざけた物言いに短気な谷垣は語句を荒くした。
茶髪に染め、襟元を大きくあけた谷垣の男らしい顔立ちが怒りに歪む。

(やべ。また怒らせちゃった)

めんどくせー、と内心で頭をかき、笠井はどうするか思案する。
しかし実のところ、谷垣からは目の敵にされているため、なにを言ってもまともにとりあってもらえないのは目に見えていた。

こういうとき非常に思う。
他人とはめんどくさい。
仲良く話すならともかく、ケンカをしたりムキになったり、変な気を使ったり。そういうわずらわしい気遣いをしたくがないためにのらりくらりとやっていたのに、ある原因により谷垣とはそのめんどくさい関係に陥ってしまった。

(恋に落ちた男ってのは、めんどうだねえ)

自分ももしかしたら、恋をすれば変わるのだろうか。熱い男にでもなってしまうものなのか。

(はは、まさかね)

そこまで考え、笠井は自身の考えを一笑にふす。
そんなことがあるわけないのだ。
レンアイなど、めんどうの塊じゃないか。

バカな考えはさておき、谷垣の神経を逆撫でするとわかっていながらも、笠井はわざとらしく肩をすくめた。
ここまで関係が崩れておきながら、谷垣の気持ちを汲むのがめんどくさかったからだ。

「生徒会ってかったるいんだよねー。なりたかったわけじゃないし。会計になったからにはやるけどさー」
「てめえ…」

谷垣の眉間がきつく寄る。
見るものが見れば、恐怖に震えそうな威圧感であった。

「てめえなんかに純汰は渡さねえ」
「俺はほしいなんて一言も言ってないですよー」

にへらと笑う笠井へ、谷垣の眼差しはますます厳しくなる。
生徒会室は静まりかえっていた。

一触即発のようにみえたが、だがそれも視線を苛立たしげに書類へ戻した谷垣により、回避された。


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あきゅろす。
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