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I'm FAKER
09
あれだけ大見得きって教室で宣言したものの、関係はらぶらぶとはほど遠かった。

(まあそれも当然だけどね)

昼休みになり、笠井は売店で仕入れた菓子パンとコーラを片手に、中庭へ向かっていた。

約束通り、郷と昼食をともにするためだ。

郷とはきのう、笠井がなかば強引に付き合うことを了承させた。
その際に連絡先をちゃっかり交換していたのだ。
朝起きると同時に郷へメールを送り、昼食のことを伝えた。メールの返信はそっけないものだったが、拒まれなかったのだから良しとしよう。

(つうか、なんで俺と付き合ってくれたんだろ)

実際は嫌なのかもしれないが、それを表にだしてこない。
男と付き合うことは平気なのか、男と寝れるのか。
笠井が強引に促したとはいえ、そもそもどうして付き合ってくれたのか。

聞きたいことは山ほどあったが、それを言って手のひらを返されたらふりだしに戻ってしまう。
結局聞けずじまいで、内心はもやもやとしたものが渦巻いていた。

「…変なやつ」

郷と付き合うにあたり、笠井はネコという立場になるが、そのことに不安はなかった。
もちろん経験はないが、女じゃないのだから処女がどうのなどいうつもりはない。

ようは、谷垣へ対抗するための "お付き合い" だが、それで楽しめれば儲けもの。
郷は笠井に傾倒し、恋愛感情をぶつけてくる輩じゃない。
だから、あの男を選んだ。

なにを考えているのかわからないくらいが、ちょうどよかった。

ぐるりと囲う校舎の中心に、人工的な林がつくられている。
太陽の明るい日差しと緑で彩られたそこは、適度に目隠しの効果があり、生徒たちが昼食をとる憩いの場となっていた。

「なぎっちー。早かったねー。待ったー?」

笠井は緩んだ笑みを浮かべ、さきに来ていた郷へ手をあげる。
中庭の奥に位置するそこは、ほかより広いスペースがあり、ひそかな笠井の特等席であった。もちろん笠井がこの場所を指定したのだ。

「…なんだ、その呼び方は」

郷がわずかに眉をひそめる。
律儀に突っ込んでもらえて、笠井は満足げに笑みを深めた。

「下の名前の "鉈技" から、あいだをとってなぎっちだよー。俺たち付き合ってるんだから、あだ名くらい当然でしょー」

笠井は返しつつ、彼のとなりに腰かける。短く刈られた草がクッションがわりとなり、座り心地は悪くなかった。


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