リクエスト企画
ー 02 ー
回想から戻り、ぼくは片柳に顔を戻す。
「でも嵩林くんが雅くんのことを好きだって噂、本当なの?」
噂が流れた当時は衝撃であったが、それ以降二人が付き合いだしたという話しはなく、二人の関係は謎に包まれたままだ。
「本当なんじゃねえの。つうか本当だったらヤバいから雅には近づくなって言ってんだよ」
「……なんで?」
「わかんねえやつだなぁ!」
要領を得ないぼくに片柳がじれ、苛立ったように頭を掻きまわした。
「人気ものってのは本人の意思にかかわらず、周囲が勝手に勘違いして暴走するもんなんだよ!」
「……つまり?」
「嵩林はお前を目障りだと思わなくても、あいつのファンはお前を嵩林のためと思って排除しようとするんだよ!」
「えぇ!嵩林くんてファンがいたのぉ!?」
「お前も雅のファンだろうが!!」
それはそうだけど、ぼくは雅くんしか見てなかったから、嵩林くんのことまでは知らなかったんだ。
「お前と話してると頭いてえ…」
そう言って片柳はうんざりとしながら雑誌へ顔を戻してしまった。
仕方なくぼくは手鏡を片手に自分の顔立ちを観察する。
「雅くんほど整ってなくても、そんなに悪くはないと思うんだけどなぁ」
全体的に丸っぽい印象があるが、一応二重だし。といっても、それはメガネでわかりづらくなっていて、おまけに真面目な雰囲気をだしていたが。
雅くんに憧れて勉強に力を入れるようになったが、どれだけ頑張っても彼みたいにクラスでトップスリーを争うまでにはいかなかった。
体育を頑張ってみても雅くんほど速く走れないし、そこにいるだけで目を惹くような存在感もかもしだせない。
「もとが違うんだよ。諦めろ」
なおもしつこく雅くんに近づけるところを探していると、そんな声が飛んできた。片柳は毎月愛読しているファッション誌に視線をやったままだ。
(ほんと友だちがいのないやつ…!)
彼を睨みつつ鏡をもう一度のぞき、ぼくはあることに気がついた。
「そうだ。ぼくだってメガネをとれば少しは…」
「ダメだ!」
いきなり大声で叫ばれ目を丸くする。
ベッドのうえで、片柳が恐い顔をして上体を起こしていた。
「な…なんで…」
「お前はメガネを取るな。そんなこと俺が許さない」
「へ…?」
なんだそれは。
それじゃあまるで、片柳は独占欲をむき出しにしているみたいじゃないか。
(へ…?)
言うだけ言ってあとは雑誌へ向き合う彼を、ぼくは目をぱちぱちさせながら見やる。
これは…もしかして恋の予感?
END
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