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トップシークレット
04
あれは去年の体育祭のことである。
クラス対抗リレーの走者に選ばれた雅は、グラウンドのコーナーを回っていた。
一位は他を大きく引き離した二組。雅がいた三組は三位だったが、二位である四組を追い抜ける範囲にとらえていた。
結局、それはできずに終わったが。

二位に浮上すると思った矢先、ラインギリギリを走っていた四組の走者の足が引っかかり、雅は転倒してしまったのだ。

瞬時に赤く染まる頬。
外野からあがった落胆の声に、恐くてクラスメートへ顔向けできない。

立ち上がろうと立てた膝に鋭い痛みを感じ、雅はそこを覗き込んだ。
地面で膝頭は派手に擦れ、血が滲み、土が傷口に付着してしまっていた。すぐに手当てしなければ菌が入り、膿んでしまう。

しかし傷口が深いのか、痛みが酷くて一人で立ち上がることができない。

みっともない…。

そうして泣きたくなってしまったとき、背後から迫っていた足音がふいに止まったのだ。

『おい、大丈夫か?』

それが一年のときの嵩林であった。
一位を独走していた二組はアンカーにバトンが渡り、走者であった嵩林はさらに二位以下に大きな差をつけてゴールまで走っていた。
だがゴール直前で、その手前にいた雅のところで立ち止まり、走るのをやめてしまったのだ。
当然周囲は騒然とした。

『ケガしてんじゃねえか。立てるか?』
『あの…』

当時からその際立った顔立ちで有名であったため、雅も嵩林の存在は知っていた。しかし話したこともなければ接点もない。
その時、初めて話しかけられたのだ。
戸惑っていた。

『その足じゃムリか。…ちょっと我慢してろよ』
『えっ…、わっ…!?』

身体がふわりと浮き、足が地面から離れる。
外野から悲鳴に似た歓声があがった。
雅はいわゆるお姫様抱っこをされてしまったのだ。

『ちょっ…、ちょっと…!おろせよ…!』

嵩林はもがく雅をムシし、そのまま救護班とかかれた白テントへ運んでくれた。

お礼も言えなかった。

一位でゴール目前だった二組は、嵩林のこの行動のせいで棄権となってしまった。

それからというもの、嵩林と雅は実はデキていたやら、嵩林はずっと雅のことが好きだったなど、根も葉もない噂が校内で飛び交った。
事態が収集するまでに数ヶ月はかかったと思う。

だからなのだろう。
今期の生徒会選挙の際、会長が嵩林であるなら副会長は雅だと票を入れた生徒は多くいたと思う。
そんな彼らの行動のかいあってか、雅は副会長に選ばれてしまった。

そして今年の春、生徒会室で、雅は再び嵩林と顔を合わせたのである。

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