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02
「わかってるよ」

そう言って、雅はあっち行けと言わんばかりに手を振った。
だれが見ても失礼な態度であったが、嵩林はそれには怒りもせず息を吐いただけだった。

「はいはい、そーかよ」

大人しく自分の執務机へ戻っていく嵩林の背を窺い、雅は内心で胸をおろした。

雅が通う屋之高校は私立の男子校であり、校舎などの施設や学校運営に資金を懸ける有名進学校であった。
ここ、生徒会室も生徒が働くにしては絢爛豪華で、そんなところで執務をする生徒会役員は毎年綺麗どころが揃うと他校でもっぱらの評判だ。

屋之高校は男子だけが通う高校故か、同性愛がまかり通っておりその手のカップルが多くいる。ときには岡山のように男に強姦されそうになるケースや、実際強姦されたという生徒が数多くいた。そのため風紀委員会の見回りを強化しているが、もう一つ重要な役割を持つのが生徒会である。
風紀が身体を張って見回りをするなら、生徒会は頭脳を使って校内の治安を維持する。その他、学校運営における一部の仕事も担っている生徒会は生徒間で重要視されており、その選抜方法には力を注いでいた。

毎年、生徒からの投票で選ばれる生徒会は会長、副会長は二年から、一年からは会計と書記が選ばれる。そして選考基準はずばり校内での人気の高さであった。
自分達をまとめるものが顔立ちの良い美形であれば、なんとなく気持ちが良い。
ゆえに、個人の能力は度外視されている。
そうはいっても生徒の人気を集める人間が、やる気のないぐうたら人間のわけがない。歴代の生徒会をもってしても、顔良し、頭良し、運動良しといったタイプがほとんどであったので、それで問題が起こることはなかった。

今期の生徒会も皆顔立ちが整った、校内で評判の生徒が選ばれており、副会長を務める雅もその内の一人である。
男子の平均程の身長と、淡く柔らかな髪質に、涼しげな淡い瞳。色白で華奢な身体だが、どこか冷たい雰囲気を持った美人と評されている。
実のところ、それは幼い頃に経験した交通事故のためであったが、それを知るものはもちろん学内にいない。

どう噂をされようが知ったことではないのでかまわなかったが、自分を副会長に選ぶのだけはやめて欲しかった。
周りから綺麗だと囁かれるが、成績は中の上といった程で運動神経も平均並みだ。今期の他の生徒会である嵩林達と比べ、明らかに劣っている自覚はある。

しかし仕事は待っちゃくれない。副会長である雅のもとへは毎日仕事が舞い込み、最近できた別の用も合わさって仕事のペースは乱れがちになっていた。

雅が再度手元の書類へ視線を落とすと、嵩林との会話を聞いていたらしい飯垣が軽やかな口笛を吹いた。

「やっぱ会長って副会長に甘いよねえ。怪しいなあ」

にやりと笑う飯垣は金色の髪にアクセサリーを所狭しとつけ、外見から発言までが何かと軽い一年である。セフレも多くいるという噂の彼は、それを裏付けるような、軽薄な笑みを浮かべた。

「お姫様には優しくしなきゃって?きゃー」
「アホ。んなわけねぇだろ」

からかい口調のそれに、苛立ちまじりで返したのは嵩林であった。

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あきゅろす。
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