トップシークレット 16 体格の良い男達を見て反射的に肩が跳ねる。だが彼らが知った相手だとわかった途端、別の意味で雅の身体に緊張が駆け抜けた。 「あれー?副会長じゃーん。今日は帰り早くね?」 「生徒会はどうしたんですかー?」 あまりのタイミングの良さに作為的なものを感じる。だが実際そうなのだろう。 それまで静かだったそこに、椎名の取り巻きをする男達が下卑た笑いを響かせた。 (待ち伏せか…!) 喧嘩にものを言わせる相手から、柔道部の大柄な生徒まで、腕に自信のあるタイプが逃すまいと雅を取り囲んだ。その人選から椎名の悪意が窺える。 よく椎名と一緒にいるのを目にしていた。教科書をズタボロにするのも彼らであろう。 雅を頭の天辺から足の爪先までを眺め回して陵辱したあと、男達は楽しそうに唇を歪めた。 「副会長様が生徒会サボッて良いのかよ?先生に言いつけちゃうぜ?」 「会長もこんなこと知ったら怒るんじゃないの?」 頭に血が上る。 元はといえば椎名のせいで実行委員にされてしまったのだ。今日の会議だってそのために出ることになり、これからも集まりは増えていくであろう。 彼らが椎名の指示で待ち伏せをしていたのなら、そんなことは百も承知のはず。 男達はわかっていて雅をからかっているのだ。 (いったいなにが目的だよっ…) 雅は唇を噛み締め、男達を睨み付けた。 「体育祭実行委員で集まりがあったんだよ。さぼりじゃない」 「あれー。副会長やってるのに実行委員もやってるんだっけー?それは大変でちゅねー」 「あんまり頑張り過ぎると倒れちゃうよ?」 「…余計なお世話だ」 苛立たしく吐き捨て、彼らの話しをぶった切る。 しかし囲まれているにも関わらず強気な態度を崩さない雅に、男達の態度ががらりと変わった。 「てめえ調子こいてんじゃねえぞ。副会長に指名されて、良い気になってんじゃねえのか」 「嫌みな態度が鼻に付くわー」 男達のリーダー格と思われる真ん中の男が、雅の顔の横に腕を付く。ぐっと寄った距離に、不快感を表すしわが眉間に刻まれた。 「実行委員やったせいで、生徒会に手が回らなくなったらどうなるんだろうなあ?体育祭までぶち壊すことになったりしてなあ」 「…どういう意味だ」 明らかに含んだ言い方をされ、問い返す雅の声も低くなる。 続けられた内容は、やはりろくなものじゃなかった。 「お前みたいな顔だけが取り柄の奴が、あれもこれもできるわけねえだろ。…辞めちゃえよ」 「…、なに?」 「僕にはできませんっつって、副会長なんか辞めちまえよ」 「――」 言葉が出なかった。思考が固まり、一瞬目の前が暗くなる。 (こいつらの目的はそれなのか…) にやにやと笑う間近の顔を押しやることもできなかった。 自分が能力の高い人間だと思ったことはない。しかしそれを、他人からここまで言われなければならないのか―。 ショックとともに強烈な怒りが膨れ上がる。 これも椎名が裏で仕組んでいるというのなら、その卑劣さに腸が煮え繰り返った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |