トップシークレット 12 「二十六位か」 「うるせえな」 突いて欲しくないところをいきなり突かれ、雅の声が低くなる。嵩林は不機嫌な顔をした雅を面白そうに見下ろし、また掲示板へ目を向けた。 「俺は一位か」 「そうだよ。良かったな」 「お前心がこもってねえぞ」 「良かったなんて思ってないからな」 嵩林の低い笑いがもれる。 「ほんっと良い性格」 「…ほっとけ」 学力の差をまざまざと見せつけられ、気分が悪いのだ。自分よりはるかに良い点数を叩き出した相手のご機嫌取りなどできるわけがない。 「そういや放課後、会議してえんだけど何時に来れる?」 「あ、…」 嵩林に訊かれ、今朝、実行委員仲間から放課後に集まりがあると言われたのを思い出した。 「悪い、今日は別の用事があって…」 雅は顔をしかめる。 やはり副会長と体育祭実行委員の二足のわらじをはくのはそう簡単なことではない。 なってしまった…、というより、されてしまった手前どうにもならないが、苦いものが込み上げた。 しかしそんな雅の気など知らず、嵩林は眉を寄せ見当違いの憶測をたてる。 「あ?歯医者か?」 「…なんでそこで歯医者が出てくるんだ」 「お前帰宅部だし塾に行ってねえし、身体も健康体にしか見えねえからだよ」 そう言われてしまうと二の句が告げない。だてに生徒会で一緒なわけではないようだ。 (まずいな) 実行委員の集まりが終わったあと、校内で生徒会の人間と鉢合わせたときに言い訳のしようがため、家の用事とすることはできない。 仕方なく多少強引でも雅は曖昧に誤魔化すことにした。 「今日は…クラスの手伝いがあるんだよ」 「クラスの手伝い?お前仕事があるのにそんなヒマねえだろ」 「…手伝いくらいしたって良いだろ」 生徒会の仕事がある副会長が、クラスの手伝いをしないことなど百も承知だ。 だからこれは、本当に苦しい言い訳だった。 雅は突き刺さる視線から逃れるように瞳をそらした。 「とにかく今日はダメだ。会議は俺なしでやってくれ」 「……、お前がそこまで言うならそうするが…」 「ああ、悪いな」 まだ煮え切らない様子の嵩林へ、じゃあなと言ってさっさと背を向ける。 雅は何か言いたそうな嵩林を振り切るようにして教室へ足を進めた。 あのままいてボロが出るよりマシだろう。多少不審がられてもそれ以上の説明などできないのだから。 嵩林と話していたからか、やけに生徒達の視線がぶつかる。鬱陶しいと思いながらもこれも副会長になってしまったものの宿命かと諦めた。 つくづく嫌なクジを引かされている。 (体育祭実行委員か…) 溜め息が零れそうなのをぐっと堪える。ここで吐いて、椎名の思い通りになるのが悔しかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |