トップシークレット
09
なぜそんなに苛々しているのかと訝る雅へ、嵩林はさらに続けた。
「けど他人だからって無関心になる理由はねえだろ。何かあれば手くらい貸すっ」
吐き捨てて、苛立たしげに瞳をそらす彼は、やはり良い奴なんだろう。
(俺だったら到底無理だ)
他人が困っていようと立ち止まりはしない。自分が困っていても、まあどうにかなるかと流してしまうくらいなのだから。
生徒会長に選ばれるだけのことはある。
「つうかお前。俺のこと他人って言うのは勝手だけど、他人だったらいちいち世話焼かすんじゃねえよ」
「は?」
八つ当たり気味になじられ、雅の口から間の抜けた声が出る。
嵩林はそばにあった冷めたポテトを掴むと、無造作に雅の口へ突っ込んだ。
「むぐ!?」
「色白いは手首細いは、挙げ句仕事が終わらなくて一人で片付けようとするは」
そらされていた瞳が、いつの間にか雅を苛立たしげに見下ろしていた。
「少し目を離せばこれじゃねえか!ごちゃごちゃ言ってるヒマあったら心配されねえようにちゃんとしろ!」
動こうとしない口でぎこちなく咀嚼し、突っ込まれたポテトを嚥下した。
空になった口を開け、雅は茫然と呟く。
「…つまり…心配してくれてるのか?」
そういうことだろう。嵩林の言っていることは。
その証拠に、自分の執務机へ戻っていた彼の足が止まる。
「うるせえ!良いからさっさと食え!そんなんだから細いんだろ!」
雅は瞳を見開いた。
まさかと思い、嵩林に訊いてみる。
「お前が買ってきてくれた量が多かったのって…そのためか?」
二段重ねになったハンバーガーにLサイズのフライドポテト、チキンナゲットとそしてアップルパイ。いくら男子高校生といえど、あまりに多い量。
あれはすべて身体が華奢な雅のために、沢山買ってきてくれたということなのか。
仕事のことだけじゃない。雅の身体のことまで考えてくれていたのか、嵩林は。
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