Brother in law
06
(訊く勇気なんてないけど…)
秋羽は曜介にも聞こえるように、溜め息を吐いた。
「夕食までだから。時間になったら、さっさと出ていってね」
きつい調子で出ていけと言っていたのに、結局は曜介がしたいようにさせてしまう。
秋羽が甘やかすとわかった上で、曜介はやっているんじゃないかと、勘ぐってしまいそうだ。
モテ男は最後には自分のしたいようにしてしまうのだ。
「夕飯一緒に食おうな。どうせ一人だろ?」
「…っ…、冗談じゃない!絶対嫌だから!」
声を高くして叫んだというのに、当の本人はどこ吹く風だ。
「良いじゃねえかよ。減るもんじゃないし」
「俺は精神がすり減るんだよ。兄さんといると目立つからっ…」
歩み寄ってなるものかと曜介を睨む。しかし、やはり曜介は平然としていて、通用しなかった。
「それくらい我慢しろ。お前、俺の弟だろ」
「弟を舎弟と勘違いしてない!?ご飯くらい一人で食べられるでしょ!」
「じゃあ、時間になったら起こせよ。おやすみ」
「兄さん!」
まさか本当に寝てしまったのだろうか。
おやすみと言ったきり、曜介は瞳を閉じてしまい動かない。
(同じ部屋に…いるだけでも嫌なのに…)
家で一緒に暮らしていたときは、父と母がいた。しかし寮生活では部屋に入ってしまえば二人きりだ。堪えられるわけがない。
少し視線をずれせば、整った顔を惜しげもなく披露する兄がいる。
かっこいいと思ってしまう自分がいて、秋羽は膝を抱えて、うなだれた。
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