Brother in law
01
自分の人生に不満を覚えたことはない。帰る家があって、ごはんを食べられて、小学校に入学したときからはお小遣いをもらえた。
友達の話だと、お小遣いをもらえるのは素晴らしいことだという。
だから生活に不自由はなかった。
ただ、いつも一人だった。
朝、仕事に行く母親を見送れば、あとは家にずっと一人。いくらお小遣いをもらっても、遣い道がまったくない。
その間、友達は家族と過ごしていた。それを羨ましいと感じないほど、一人でいることに慣れていた。
一人でいるのは楽なのだ。気遣わなくて済む。
あまりに一人でいることに慣れ過ぎて、達観してしまった自分がいた。
自分はこの先一生、だれと友達になろうとも、だれと付き合おうとも、だれと結婚しようとも、一人で生きていくのだと思っていた。
だが、人生はそう思い通りにいかないと知ったのは、中学校にあがった頃。
母親が再婚し、いきなり父親と兄ができた。
二人暮らしが四人暮らしになったのだ。
しかもこの兄が、クソろくでもない兄だった。
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