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Brother in law
15
初日の生徒会業務を終えて秋羽が帰ったあと、南が仕事の手を止めた。

「なんかイメージと違ったなあ。大風の弟なら、もっと生意気なムカつく感じかと思ってた」

同じ印象を持っていた星草が、それに同調する。

「大風が外見からして強烈だからかな。弟はふつうだよね。仕事をする上ではそのほうが助かるからいいけど」
「先輩に楯突いてきたら、いじめちゃおうかと思ったのになあ」

その様子を想像し、南がにやにやと笑う。
まだ秋羽という人間は未知数だが、初対面で思いやりのない態度はなかった。それどころか、借りてきた猫のように大人しく、神経質な部分さえ窺えた。

「ああいうタイプって、ちょっかいかけたくなるよねえ。初めは嫌がってたのに、だんだん俺に落ちていく過程がたまんねえ…」
「ちょっと南、ぼくが言ったこと聞いてた?秋羽くんに手出すなって言ったでしょ?」

黒渕がすかさず釘を刺す。しかし効いているのかいないのか、当人は笑うだけだ。

「そういえばさ、大風が三年の雛形さんと付き合ってるって本当なのかな?」
「それ、ただの噂でしょ?」
「でも目撃証言はたくさんあるだろ?」

星草が冷たい瞳を向けるも、南は懲りなかった。

「雛形さんて、かわいい顔してるけど性格すげえきついじゃん?俺でも食指動かねえよ。黒渕は知ってるのか?」

同じ軽薄者同士で気になるようで、なかなか話題を変えない南に、黒渕も呆れ顔だった。

「知らないよ。曜介とは仲良しこよしみたいな関係じゃないんだから」
「だれも知らないのかよ」
「大風相手に突っ込んで訊ける人がいないってことじゃないの?」

星草が手を動かしながら返す。それに妙案を得たとばかりに、南がにやりと笑った。

「じゃあ、弟に聞いてみるか」
「暇人」
「せっかく繋がりができたんだから、有効活用しなきゃじゃん?」
「不憫」

懲りない南は、ふんぞり返り、頭のうしろで両腕を組む。

「星草だって言ってたろ?大風の弟に生まれたのが不運だと思って諦めろって」
「……どうなっても知らないから」
「うまくやるよ、俺は」

その自信はどこからくるの、と星草が低く呟くが、南は聞こえないふりをした。

顔をしかめたのは黒渕だ。

「曜介を怒らせるな。弟は地雷だよ」
「え?そうなの?」

南が声を跳ねあげ、瞳を見開く。しかし、それで引くような彼じゃなかった。

「俄然、おもしろい」
「南、生徒会を回らなくさせるつもり?」

黒渕が鋭い眼を向ける。それには肩をすくめ、南は答えた。

「まさか。ぎりぎりのラインは見極めるよ」
「言ったね。見誤ったら、ぶっ殺す」
「りょーかい」

着々と話しが進むなか、金丸だけが席を立ち、さっさと帰っていった。

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あきゅろす。
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