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Brother in law
13
曜介は一度も家に女を連れ込まなくなった。
しかし学校に行けば、曜介が女といたという話を、いろんな人から聞かされた。

中学校の有名人だった曜介は、全校に顔と名前が広がっていた。
少しでも曜介に近付きたいという相手から、秋羽はことあるごとに報告を受けていたのだ。

長続きする女はいなかったようで、聞かされるたびに違う女だった。彼女だったのか、セフレだったのか、それはわからない。

なぜなら曜介は、そういった類いの話を一切秋羽にしなかった。

顔と身体だけが良くて、性格は飽きっぽく他人を思いやらない。
あっさり女を捨てても、曜介の人気が落ちることはない。

大風曜介だから、しかたない。

そう口々に言われていた。

「人のことコキ使って、手が早くて見境ないなんて、まんま兄さんじゃないか」

秋羽は生徒会室への道すがら、一人なのを良いことに、グチを言い続けていた。
教室自体が少ないため、生徒会室の近辺は人の通りがほとんどないのだ。

「なにが生徒会には気を付けろだ。兄さんの方が危険なくせに、勝手なことばっかりっ…」

いつも秋羽を振り回して、聞きたくもない曜介の女事情に精通するはめになって、それもすべて曜介のせいだ。

(……最低だと思ってるのに…)

それでも曜介に惹かれてしまうのだから、自分もたいがい、どうしようもない。

秋羽は豪奢な扉のまえで立ち止まる。生徒会室と書かれた、ネームプレートがある部屋だ。

(…緊張する)

生徒会は全員先輩だ。式典のとき、壇上に上がっている彼らを見たきりだ。

「失礼します」

室内に踏み入ると、すでに役員がそろっていた。

「やあ、弟ちゃん。待ってたよー」
「え…?」

秋羽を確認した途端、黒渕が安堵したように息を吐き、秋羽は首を傾げる。

「俺が来ないと思ってたんですか?」
「いいや、来てくれると思ってたよ。ただ妨害されるかなって…ね」
「妨害?」

なおも言い募ろうとしたが、黒渕から肩を抱かれ、中央まで連れていかれた。

生徒会室は正面に大きな窓があり、開放的で陽射しがたっぷりと降り注ぐ造りだった。
奥から会長、副会長、会計、書記の順で仕事机が並び、それぞれ席に着いている。

三人の視線を浴びながら、黒渕から紹介を受けた。

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