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Brother in law
11
放課後を迎え、校内は賑やかだった。
秋羽は教科書とノートを適当にかばんに突っ込んでいく。宿題が出ているものと、予習が必要なものだ。

「大風、帰ろう」

隣にやってきた鈴木に、秋羽は頷こうとして動きを止めた。

「ごめん、このあと生徒会室に行かないといけなくて」
「えっ?なんで生徒会室?」

眼を丸くされ、秋羽はどう答えたものかと思案する。

「二人とも帰るの?ぼくも一緒に帰るー!」

秋羽と鈴木に、宮川が声をかけてきた。二人ともクラスメートであり、秋羽がつるんでいる友達である。

派手な生徒も多い学園で、鈴木と宮川は目立たず、一緒にいるのがらくなタイプだ。

きのうまでは二人と下校をともにしていたのだが、今日からそれができなくなった。

「鈴木、宮川、ごめん。俺、生徒会手伝うことになって…」

声をひそめて告げる秋羽に、二人は驚いた表情を浮かべた。
生徒会といえば派手な集団というイメージが強く、全員二年生で構成されている。なぜそこに一年の秋羽が、という思いもあるのだろう。

(俺だってなんでこんなことになったんだか…)

秋羽は謝りつつ席を立ったが、その直後、不穏な人影を見付け、頬を引き吊らせた。

「秋羽!」

廊下から呼ばれ、教室に残っていた生徒達が秋羽を振り返る。

(あのくそ兄…)

秋羽はかばんを持って、急いで廊下に出る。
そこでは金髪を揺らした曜介が、多くの視線を集めながら秋羽を待っていた。

(くそ…視線が痛い…)

曜介は寄り掛かるようにして、扉に身体を預けていた。ちょうど教室の中が見渡せる位置だ。

「一緒にいた二人が、お前のダチか?」
「…そうだけど。それがなに?」

極力目立ちたくなくて、秋羽は伏し眼がちに応じる。曜介が教室まで来たのは初めてで、どうしたのかと訝しんだ。

「なんつうか…すげえ平凡で特徴がない奴らだな。もうちょっとマシなのいないのか?」
「……は?」

言葉を聞き間違えたのかと、秋羽は耳を疑う。

「まさか…いきなり俺のクラスに来て、友達侮辱する気?」
「はあ?なに怒ってんだよ」

態度が硬化した理由がわからないらしい曜介に、聞き間違えでなかったのだと察した。

校内でなければ、曜介を殴っていたところだ。他人をかえりみない自由人だと思っていたが、思いやりがない失礼な人間でもあったらしい。

みるみる眼差しが冷えていくのは、しかたのないことだろう。

「兄さんがいると目立ってすごい迷惑だから、さっさと帰ってくれない?」
「…お前、兄貴にも少し優しくしろよ。ダチには笑ってたろ」
「……!」

批難がましい瞳で見下ろされ、秋羽は動揺を隠せなかった。
いつから見られていたのだろう。
無防備な自分を曜介に知られるのは、たまらなく恥ずかしい。

「プライバシーの侵害だよ。勝手に見てないで」
「お前がちゃんとクラスでやれてるか、見てやってたんだろ」
「そんなの頼んでないから…!本当大きなお世話」

顔が赤くなっているかもしれない。曜介といる空気の密度が濃いような気がして、息苦しくなってくる。

(恥ずかしいし…バカなんじゃないのッ…)

しかし、喜びを感じている自分もいた。
曜介の生活圏に、秋羽がしっかりと存在しているのだと、言ってもらえたようだから。

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あきゅろす。
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