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短編
04
SIDE:透季

驚いた。まだ体格は出来上がっていないが、女らしさなど微塵もないのに真理奈とは。名前だけ聞けば、間違いなく女と誤解していた。

グループて話してもうまく話が進まないので、まず二人に分かれて意見をまとめることになった。そのパートナーとして真理奈を誘ったのは、どことなく興味を覚えたからだ。

「地域…活性…とか、正直、俺よくわかんない…ていうか、」

薄々勘付いていたが、真理奈も連れて来られたくちだろう。

(高校生なんて遊びたい盛りで、こんな場所は退屈だろうね)

透季も暇潰しに来てみたが、むしろここにいること自体が暇だ。
好き好んで参加する松原の気が知れない。

「あ、あの、大峰…さんは…、案ありますか?」
「…俺?」

真理奈のたどたどしさを眼で追っていて、まったく考えていなかった。それよりも、なぜ彼は俯きっぱなしで声を詰まらせながら話すんだ?

(俺、嫌われてる?)

初対面の女に嫌われることがないので、初めての場に参加することは得意だと思っていたが、それが男子高校生に通用するかはまたべつの話なのかもしれない。

そんなことにようやく思い当たった自分は、間抜けだろうか。

(でも話振ってくれたし、嫌われてるわけじゃないのか?いや、単に自分の意見が出ないからか)

真理奈を誘ってしまった手前、嫌われて終わるのは居心地が悪い。

透季は考える素振りをして間を稼ぎ、あたかも最初から考えていたかのように口にした。

「若い子が楽しめるイベントをするなんてどう?少子化って言われてるけど、みんな好きなことにはアクティブじゃない?」
「イベント…?」
「そう。真理奈くんは、どんなことが好き?」
「なっ…名前で呼ぶな!」

いきなり拒絶され、透季は面食らう。驚き過ぎて、なんの指摘をされたのかわからなくなったくらいだ。

「え…と、真理奈ってきみの名前だよね?」
「……」

不機嫌そうな瞳が透季を貫く。

「名前で呼んじゃ駄目ってこと?初対面だから苗字でって…?」

意識して名前を口にしたわけじゃなかったが、ここまで嫌がられるとは想像もしていなかった。

(まだ難しい年頃だよな。こっちがいくら気を付けたところで、高校生って思いもよらない解釈して機嫌悪くなるし)

現に地雷を踏んでしまったようだ。
疲れた溜め息を呑み込んで場を取り繕うとしたとき、真理奈がぼそりと呟いた。

「名前…女みたいでヤダ…。だから、名前呼ぶな…」
「………」

相変わらず視線すら合わない。しかし、この言葉を解釈すると、透季が名前を呼ぶのが駄目なのではなく、女みたいな名前にコンプレックスがあるから呼ばれたくない、というところだろうか。

透季の悪戯心が疼く。

(んなこと言われたら、益々名前で呼びたくなっちゃうだろ?)

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