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短編
02
SIDE:真理奈

嫌々出かけるときに限って、空は憎たらしいほど青く澄み渡っているものだ。

「なあー、やっぱ帰ろうよー」
「建物が目の前にあるのに、なに言ってんの。真理奈も行くって言ったじゃん」
「それはそうだけど…」

言ったものの、後悔していた。
地域の発展のために、なんて柄じゃない。それはお役所が考えることで、高校生の自分がない頭を絞ることじゃないはずだ。

幼馴染みにせがまれなければ、首を縦に振ったりしなかった。

「信彦(ノブヒコ)と違って、地域振興会とか…漢字ばっかでよくわかんないし」
「俺だって初めて参加するんだからいいじゃん。お互い初心者マークだよ」

事も無げに言われたが、不安は増すばかりだった。

(すげえ頭の良いメガネかけた天才ばかりだったらどうしよ…。俺なんていつも赤点ぎりぎりだよ…)

高校三年に上がった今年、先週も母親から進路をどうするんだとせっつかれたばかりなのだ。
頭の悪さに負い目を感じているのに、上から目線でバカにされたら地中海の底まで気持ちが沈んでしまう。

「ほらほら、早く行くよ」
「えー!信彦〜…!」

情けない声で叫んだが、真理奈は引き摺られていった。


※※※※※


「それではグループに分かれて、どんどん意見を出してください」

真理奈の予想は八割方当たっていた。

(すごい気まずい…)

二十人弱の参加者が三グループに分かれ、地元発展のための取り組みについて、話し合わねばいけないようだ。

長机の下で拳を握り、内心を呈するように真理奈は俯いた。
信彦とグループが一緒だったのには安心したが、興味本位で付いてきただけなのでまともな考えが発表できるはずがない。

年齢も性別もごちゃ混ぜのグループで、口火を切ったのは大学生くらいの青年だった。

「まずは自己紹介からいこうか。俺は松原です」

松原は人好きのする笑みを浮かべ、場を仕切り出した。

「大学四年で、大好きな地元をたくさんの人から知ってもらいたくて参加しました。どうぞよろしく。じゃあ次、透季」

松原が隣にいる青年の肩をタッチすると、彼は一瞬押し黙った。
しかし疑問を挟ませないうちに、そのモデルのような顔を笑みで彩る。

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