マイ☆レジスタンス
06
タクトの言葉を受けて少年が背筋を伸ばした。
「んじゃあ、行くよ。――始め!」
加巳が真っ直ぐ走り込み、手が届きそうな範囲まで詰める。
(速いッ…)
動きを見ればわかる。加巳も武道をやっているのだ。
タクトはすぐさま後ろへ下がり、距離を取ろうとした。しかし加巳はそれすらも飛び越えてタクトに近付く。加巳の手が、タクトに掛かる。
考えるよりも先に、口が開いていた。
「――解(カイ)―…」
首輪が声に反応し、エイドの魔力がタクトに流れ込む。
全身を覆う、ちりちりと焼け付く赤い粒子。タクトはそれを右手に集め、加巳へ放った。
「――!」
真っ赤な炎が龍のようにうねり、加巳の肩をはじく。
「く――!」
それだけで加巳の身体は押し返され、肩で炎の残り火が立ち上る。
加巳が叩いて消し終わるまえに、タクトは手首をスナップさせて火を消してみせた。
「これでわかったでしょ、ただの一般人じゃ敵わないって」
「はは、服焦げたな。でもそれだけか」
まるで大したことないと言わんばかりの態度に、タクトは眉をひそめる。
「馬鹿言わないでよ。まともに炎が当たれば皮膚がただれて骨まで溶かす。人一人殺すことだってできるんだからさ」
さらに言えば、炎が科学室に引火すれば、校舎ごと燃え尽きてしまうのだ。
「でも、お前はそうしねえんだな」
加巳に、にやりと笑われた。
「当たり前でしょ。ご主人様の命令なしに好き勝手やったら従者失格だよ」
「なんでお前は従者なんかやってんだ?」
タクトは口をつぐんだ。
理由はいくつかある。だが一番の特権と言えば、これだろう。
「魔力を操るのが快感だから」
最高に楽しいと言うように口元を上げる。
従者だなんて堅苦しいことが嫌じゃないのは、エリートの付属品としておこぼれを頂戴できるからだ。
魔力も、そして男も女もだ。
「ふうん…、男も女もね」
「なに?軽蔑した?でも従者に抱かれるなんてみんな嫌がるんだから、好みの子と自由にセックスしたほうが楽しいでしょ」
思案顔の加巳に、はっきりと言ってやった。
従者だろうと年頃の男で欲求は溜まるのだから、その場限りの快感を求めるのが手っ取り早い。
エイドといれば相手にも困らない。
何やら考えていた加巳だったが、それならばと口を開いた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!