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マイ☆レジスタンス
05
月に掛かっていた雲が流れ、科学室に光が差す。

茜と呼ばれた少年は、気の強そうな瞳をすがめ、薄い唇を引き結んでタクトを睨んでいた。

(美人じゃん…)

腹の奥にもやもやとしたものがとぐろを巻く。

加巳は隣に視線をやりつつ、不明瞭な声を出した。

「こいつは成宮茜だ。言うことが過激だが、まあ…聞き流してくれ」
「ちょっと!年下だからって舐めないでよ!」
「舐めてねえよ。少しは大人しくできねえのか」

加巳より成宮は年下なのか。
そのわりに成宮は敬語を使っていないのだな、と冷めた気持ちで二人を見る。

「もし俺が協力したとしてさあ」

タクトが声を投げ掛けた。
加巳と成宮はぴたりと動きを止める。

「きみ達があっさり失敗したら、俺困るんだけど」
「安心してくれていいぜ。俺等は強えから」

暴れる成宮を背後から押さえ付けた加巳が、安易に請け合う。
体格差からか腕力の差か、怒りで真っ赤になった成宮が口を塞がれいくら暴れても加巳の腕は緩まなかった。

「心配なら試してみるか?」
「…俺に敵うと思ってるの?」

タクトの声音が低くなる。
従者のプライドに触れた。

魔力に素手で勝てると思っているのだろうか。協力を仰いでいるわりに、見くびられたものだ。

「お前等でしゃばんなよ」

加巳は仲間に指示を出し、タクトと向かい合う。
本気でやり合うつもりでいるらしい加巳に、タクトは首を傾げる。

「どれくらい手加減して欲しい?」
「それじゃあ意味ねえだろ」

淡々としながらも、タクトはつらつらと考えていた。
力を使えばエイドに気付かれる。そうなれば何があったのかと問い詰められるのは必至だ。

ここでのことを言えるわけがない。

(できるだけ魔力を使わなくて済むように…)

タクトは身体能力が優れているうえ、武道を習っている。
たかだか一介の生徒に負けると思わない。勝算はある。

加巳がそばにいた少年に戦いの合図を出すよう頼んだ。

「二人とも準備は良いかい?」

加巳はすぐさま返事をし、腰をかがめる。

(スピード勝負だねえ)

等間隔に長机が並ぶ科学室で、派手な立ち回りはできない。一息で間合いを詰め、勝負を決める他ないだろう。

エイドの従者として負けるわけにいかない。

タクトは加巳の瞳を見詰め返すと、少年に告げた。

「いつでも良いよ」

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