マイ☆レジスタンス 03 目隠しをされたが、両腕は軽く後ろ手に押さえられただけだった。 そのまま階段を下りたり上ったりし、連れて来られたのは科学室である。 「へえ、こんな団体があったんだあ」 目隠しをほどかれたタクトは、電気の消えた室内を見やる。 窓から外灯の光が入ってくるだけで、顔までは判別できない。 しかし科学室には十名程の生徒が待機していたようで、タクトを連れてきた彼らと合わせると総勢二十名程だろうか。 「で?きみがリーダーなの?」 タクトは笑みを浮かべ、昼間の男に視線を移した。 ワックスで左右に流した髪は茶色く、荒々しさの中に男らしさがある。 さらに肉厚の唇は色っぽさを感じさせた。 「単刀直入に言う。俺達に協力してくれ」 タクトは瞠目した。男はとことん常識というものを持ち合わせていないらしい。 「協力って…。俺が従者なの知ってるよね?」 「従者だから言ってんだ。俺達だけじゃどうにもならねえんだよ」 男は加巳七央と名乗ると、事の次第を話し始めた。 「あんたも知ってんだろ、ヴァルパッチュ学園特有の校則を」 学園の生徒であれば、知らない者はいないだろう。 学則第四十九条、学園内で魔法絡みの争いが起きた際は生徒間で解決すること。 すなわち、例え死人が出ようとも学園側は一切関与しないということだ。 表向きは早く社会の空気に馴染めるためと謳っているが、学園長がエリートであるのが主な理由だろう。 自分のテリトリーをエリート史上主義にしておきたいのだ。 「ガキが勉強する場所でエリートもクソもあるかよ」 余程鬱憤が溜まっているのか、加巳は苛立たしげに吐き捨てた。 (なるほど。だから昼間も食堂で止めに入ったわけだ) 四十九条があろうとエイドのように無闇に魔力を使わないエリートもいれば、気分次第で魔法をふるう日室のようなのもいる。 タクトも手放しに了承しているわけじゃない。 「俺はこんな馬鹿げた学則をなくしたいんだよ。だが学園側は俺等の言うことなんざ聞きゃしねえ」 「そうだろうねえ。なにしろエリート様だしい?」 茶々を入れると、周囲の生徒達から殺気が飛んできた。 「そこであんたの出番だ。俺達だけじゃ出来ねえことでも、あんたが手を貸してくれんなら出来ることがある」 「買い被られてるのかなあ。ご主人様に秘密でそんなことしたら、俺はきっついお仕置きされちゃうよお」 「嘘ばっかり」 加巳は鼻を鳴らし、タクトの首元を示した。 「そんだけ高価な首輪を主人から贈られる従者が他にいるかよ」 「……」 タクトはいたずらがバレた子供のような笑みを浮かべると、煽るようにルビーがはまった首輪に手を掛けた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |