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アンダーグラウンド
08
邑史がたまり場としている捨てられた倉庫。
今夜も賑やかなチーム仲間を横目に、邑史は幹部以上でしか立ち入ることを許されない、最奥のソファーがある場所をめざす。道中、邑史に気づいたチーム仲間からのあいさつに返していき、風をきるように足を早めた。

すでに勢揃いした幹部を見わたし、空いていた中央の一人用ソファーへ腰かける。
タバコをくわえ、思いおもいに時間を過ごしていた彼らは、邑史を確認すると緩めていた気をひきしめた。

「全員いるな」
「ひさびさの幹部集会ですからね。気合いも入るってもんですよ」

そう言って巣鴨が唇をもちあげてみせる。それに邑史も笑みをみせ、さっそく本題をきりだした。

「富永から聞いてると思うが、東のチームである紅蓮の焔が最近俺らの縄張りで怪しい動きを見せてるらしい」

邑史も彼らにならい懐からタバコをとりだす。ニコチン度の高い、重い煙を吐きだすと、そのうまみに口元がほころんだ。

「…っ…」

富永始め、幹部たちが息をのむ。だがすぐに咳払いをして誤魔化しに入った。幹部という立場上、総長の笑みに見惚れるというのはバツが悪いからであろう。
己の顔立ちのことは重々承知している邑史は、それに反応するでもなくそのまま続きを口にした。

「この地区で縄張りはってんのは俺らのチームだ。ほかのチームの連中がうろちょろしてんのは気に入らねえ。俺としては、早々にやつらをどうにかしたい」
「当然っすよ!ここの総長は邑史さんなんすから!」

バツの悪さをまぎらわすためか、富永が勢い込んで邑史に同調をみせる。ほかの幹部面々も声こそあげないものの、それに異議はないようであった。

「だがあいつらと正面からぶつかったところで、トップの連中が雲隠れするおそれがある。卑劣で逃げ足が早いようだからな」

邑史は目の前に差し出された灰皿で灰を落とし、また深く煙を吸う。

「そこで松波慶多の出番だ」
「邑史さん、その松波慶多ってのはだれなんですか?」

巣鴨が眉をよせ、きのうと同じ質問を口にする。だれよりチームのことを考えている巣鴨ゆえ、知らない人間を作戦に加えることが心配なのであろう。
邑史は巣鴨を安心させてやるため、答えを明かした。

「俺の高校の後輩だ」
「後輩…?そいつは邑史さんが総長をしてることを知ってんですか?」
「…まあな」
「えー!珍しいですね。邑史さんが部外者を使うなんて」

そのとき巣鴨との会話にわって入るように、富永から驚きの声があがった。
たしかに邑史はチームメンバー以外のものをケンカに巻き込んだことはない。だがそんなことは当然であるし、誇ることではないのだが、今回ばかりは事情がちがった。

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