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アンダーグラウンド
05
邑史達のチームがたまり場としている古い倉庫で、一番奥の広いスペースにソファーを置き、そこを総長と幹部の居場所としている。
五人いる幹部のうち、今日は富永と巣鴨が邑史とともにソファーの上で密談を交わす。

前方を見ればチームのメンバーが数人ずつ固まり、大声で馬鹿話をしながら喫煙していたが、それもこの奥まった場所ではあまり気にならなかった。

「で?その紅蓮の焔が、俺を狙ってるってのは本当なのか?」

邑史は富永へ視線をやり、低い声で確認する。自分が狙われているのが事実ならば、悠長に構えているわけにはいかなかった。

「本当っすよ!」

富永は背筋をかがめ、ぐっと邑史へ顔を近づける。総長が狙われているとは、ほかのチームメンバーには聞かせたくないのであろう。巣鴨も同じように背をかがめてきた。

「そいつらかなり気性が荒いようで、やり口が汚いらしいんす。頭を潰せばチームもろとも崩壊すると思って、一人になったところで奇襲をかけたり…」
「でもまあ、奇襲なんてよくあることですがね。昨夜の抗争も、ここに奇襲をかけられたのが始まりのわけですし」
「ちょっとお前は黙ってろよ…!」

おどろおどろしく言葉を紡ぐ富永を遮るように、巣鴨が己の感想を述べる。巣鴨が言ってるほうが的を射ていると思うが、富永の話も最後まで聞かなければ、危険の度合いはわからなかった。

「富永、続けろ」
「は、はい…!」

富永は表情を引き締め、邑史に向き直る。

「近頃、ヤツらうちの縄張り内をうろちょろしてんすよ。なにかを探るようにこそこそと。どうにも邑史さんが一人になるときを探ってるとしか…」

考え込むように眉をひそめる富永をまえに、邑史も考えを巡らせる。
他チームが他チームの縄張りに出入りすることは暗黙の了解で禁止されている。そうでなければ縄張りをはる意味はないし、より広い縄張りを得ることがこの世界では高いステイタスを意味する。
それを破り、紅蓮の焔が邑史達の縄張りを犯しているのであれば―。少なくとも、ケンカを売られていると考えていいだろう。

「まあ、ヤツらが俺らの縄張りを狙ってるのは確かかもな…」「そうであるなら邑史さんには気をつけてもらわなきゃなんないっすね」

邑史の言葉をうけ、巣鴨が唸るように呟く。
チームを襲うときにまず頭を狙うのであれば、縄張りを奪おうとヤツらが動いた際に真っ先に目をつけられるのは邑史だ。
邑史の動きを封じ、チームごと崩壊させるつもりなのかもしれない。

邑史はソファーの上で、行儀悪く膝をたてる。

「俺らは西地区の最強チームになった」

そして二人いる幹部へ言い聞かせるように言葉を紡ぐ。

「東からちょろっと顔をだしたヤツらに負けるわけにはいかねえ」

プライドもある。しかしなにより、卑怯な手段を使うチームになど、負けるわけにはいかなかった。やるなら真っ正面から。それがケンカというものだ。

「明日幹部を全員集めろ。集会開くぞ」
「はい!」

富永と巣鴨の声が合わさる。
口元が緩み、これから起こるであろうケンカに体がぞくぞくした。

負けられない。
汚い手を使う人間に、負けるわけにはいかなかった。

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