アンダーグラウンド
01
人気のないさびれた倉庫。周囲に生い茂った草むらからは虫の鳴き声がする。
しかしそんな場所に似つかわしくない、派手な髪色をした少年達が、そこには何十人と集まっていた。
少年達の低い呻き声に、肉を殴る鈍い音。
都会のネオンの奥で淡い光を放つ星の下では、未成年の少年達による乱闘が繰り広げられている。
ケンカ騒ぎなど世間の人は眉をひそめるものだが、片薙邑史(かたなぎ ゆうし)にはここが世界中のどこよりも公平で崇高な場所に感じられた。
それを表すように邑史の口元が楽しげに吊り上がる。
「祭りだ」
矛盾だらけの法律に縛られたこの世界。
警察はデカイ顔をして、自分達の目が届く範囲でのみ正論として法律を行使する。一歩その枠から外れれば違反など腐るほど転がっているというのに。
どのツラして正義者ぶっているのだか。
そんな偽善に彩られた世界で、唯一『ここ』だけは違うのだ。
力がものをいう世界。
勝ったものが力を手に入れる。
こんなにわかりやすいことはないではないか。
邑史は柔らかな茶髪を風になびかせながら、乱闘真っ只中へ歩を進める。チームの総長を務める邑史を習うように、幹部達が後をついてきた。
心臓が騒ぐ。
楽しみで仕方がない。
「行くぜ」
草を踏みしめ体を低くすると、邑史は風を切って中央を駆け抜けた。
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