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アンダーグラウンド
09
邑史は富永から受けた報告を吟味するように思いかえしながら口をひらいた。

「紅蓮の焔が俺らの縄張りにいたのなら、俺らのチームの人間は全員顔がわれてると思ったほうがいいだろうからな。この作戦で必要なのは、俺らに関わりのない、まったくの素人なんだよ」
「と、いうと?」

巣鴨の返しに邑史は頷く。
そして今回紅蓮の焔とケンカするうえでの作戦を話しだした。

「俺はやつらのたまり場に奇襲をかけるマネはしたくない。だが呼び出したところで、やつらは素直に来ないだろうな。物影に隠れて、俺らのふいをつこうとタイミングを見計らってくるだろう」

幹部たちは真剣な面もちで邑史の話しを聞く。これから行うケンカの作戦概要だ。総長である邑史の意向をしっかりと理解するためにも、話しを聞き逃すわけにはいかないのである。

「だからやつらを呼び出し、そこに何も知らない松波慶多を呼びつける。俺らとの待ち合わせ場所に無関係な松波が来れば、やつらも面食らって全員姿を見せるだろう。そこを俺らでいっせいに叩く。どうだよ、この作戦」

邑史はにやりと笑って幹部たちを見わたす。

きのう松波慶多と会ったときにひらめいたのだ。チームのメンバーしか知らない、邑史が総長をしているという事実を知る松波の登場。邑史が総長であると知って近づいてきたのなら、多少の危険な事柄に巻き込まれたところで文句は言えないであろう。

巣鴨がいたずらを仕掛ける子どものように口元に楽しそうな笑みをはいた。

「いいっすね、邑史さん」

異論するものはいない。みな満足気な表情で頷いている。
それを確認してから邑史も笑みを浮かべ頷きかえしたが、邑史は、今回どうしても注意しなければならない点をまだ言っていなかった。

「今回紅蓮の焔を全員おびきよせるために松波慶多を使うが、何回もいってるように、あいつは素人だ。ケンカなんかできない。…松波には傷一つ負わせるな。あいつが殴られそうになったら全力で守ってやれ。いいな」
「わかりました」

力強い巣鴨の言葉を筆頭に、幹部各々が了解の返事をする。
とりあえずはこれで一安心であろうと息を吐いたのもつかの間、邑史は控えめにかけられた声に言葉をのんだ。

「邑史さん。確認ですが、その松波慶多は呼びだしを受けたとして、約束通りその場に来ますか?」
「……」

幹部のなかで冷静に物事を見極めるのに長けた鍵内が、細めた目で邑史を窺う。

「邑史さんの後輩だからって、よく知ったやつじゃないのなら、あまり信用をおくのは危険では?」

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あきゅろす。
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