三毛と嫉妬 3
ミケがカボチャを手にしたところで、俺はプッツンと切れて、「いい加減にしやがれッ!」と怒鳴りながらチョコレートの袋をミケの顔面に叩き付けた。
根菜に比べたら痛くも痒くもないだろうが、ミケは驚いて涙が引っ込んだようだ。
「それやるから機嫌なおせ。な?」
「貰い物なんていらないっ」
ミケは口をとがらして拗ねた。
「アホか。ちゃんとお前のために買ったに決まってるだろ」
「……へっ?」
きょとんとしたミケが、床に落ちた紙袋に視線を落とした。
「女の子から告白されたのは確かだけど、一個も受け取ってないから」
俺がそう言うと、ミケは大慌てで紙袋を拾って中から包みを取り出した。
たかだか五百円程度だが、貧乏学生の俺が悩んで選び抜いたチョコだ。
顔を上げて俺を見つめ直したミケの目が、再び潤んでいた。
「言っておくが、売り場は女ばっかで恥ずかしかったんだからな。ありがたく食いやがれ」
そう言い終わった頃には、俺は何故か素っ裸でベッドの上だった。
さすがにチョコより先に食われるとは思わなかった。
相変わらずミケは、魔法の使いどころを間違っている。
「ミーケェェェ!」
洗面台で自分の首筋を見た俺は、ミケの顔面に鉄拳を叩き込んだ。
首筋には浅黒い謎の模様がくっきりと浮かんでいた。
「印つけていい? って聞いたら、いいよ、って言ったもん!」
ミケがナミダ目で抗議する。
言ったもん、じゃねぇよ。
コトの最中に印と言われたら、せいぜいキスマークだと思うだろうが。何なんだ、この本格的な印は。
「これね、ミケの所有印。印で常にミケと繋がってるから、これからは誰と会ったとかどんな話したかとかわかるから、誤解とかもう絶対にしないから!」
「てめぇはストーカーかぁぁぁぁっ!!」
もう一度ぶん殴ると、ミケはしょんぼりとうなだれた。
……ったく。
俺はため息をついた。
悲しそうな顔のミケを見ると、つい許しちゃうのが俺の悪い癖なのだ。
〜おわり〜
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