闇夜の国 4
※
シイナは開けっ放しになっているドアから、教室の中を覗き込んだ。
昼休みなので、教室の中は雑然としている。
ただし、その中でひとつの机だけは人のいた気配すらなかった。
「……タカシくん、今日も休みなんだ」
シイナはため息をついて、呟いた。
最近のタカシは休みが多い。
「なあに、シイナってば、まだあの男に関わってるわけ?」
後ろで呆れたような友人たちの声が聞こえた。
シイナは困ったような顔をして振り向いた。
友人のヒサヨとミチコは最近の女子高生らしく、スカートの丈を短くつめた制服を着ている。ミチコに至っては、髪の毛を派手なオレンジ色に染めていた。
シイナのように、校則で決められたとおりの格好をしている生徒など、全校を隈なく探してもそれ程の数はいないだろう。
「シイナは優しいよねー」
「もう放っとけば? あんなのと話してたら彼氏出来ないよ?」
友人の散々な物言いに、シイナは眉をひそめた。
「あんなの、って――酷いわ。幼なじみよ」
シイナがそう言うと、ミチコは、
「確かに顔はそれなりだけどさ、メチャ暗いじゃん、あいつ」
と言って、アハハと笑った。
「シイナ、せっかく男子に人気あるんだから、あんな奴、さっさと振っちゃえば?」
ヒサヨはシイナの長い髪を引っ張りながら、意味ありげに笑った。
「別にあいつがあんたの王子サマ、ってわけじゃないんだしさ」
「あいつだってその辺、やっとわかってきたんだよ」
シイナは、ハッと息を呑み、ヒサヨの目を見た。
「……ねえ、まさかタカシくんに何か変なこと言ってないよね?」
ヒサヨとミチコは視線を交わした。
「別に。本当のことだけよ」
そう言って、ふたりは何がおかしいのか、馬鹿笑いした。
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