[携帯モード] [URL送信]
闇夜の国 3
 僕は電話ボックスを出て、新宿の空を見た。夜空は白っぽく濁り、ネオンの光だけを照り返していた。

 子供の頃、近所に住む同い年の女の子、シイナと見た星空は新宿とは違い、とても美しかった。



 僕の母さんとシイナの母さんは高校時代の同級生で、何かにつけてシイナの両親は僕を遊びに連れて行ってくれた。

 その夜も、シイナの家の車で小高い丘まで星を見に行ったんだ。


 ――星って、どうしてキレイなのか知ってる?


 シイナは大はしゃぎで両手を夜空に伸ばし、無数に散らばる星を掴もうとしながら聞いた。

 僕には分からなかった。


 ――シイナはタカシくん好きだから、教えてあげる!


 シイナは少しお姉さんぶって、得意げに何か言っていた。

 ただ、その言葉までは思い出せなかった。


 僕は視線を落とした。


 僕のことを、好きだ、と言ってくれた人の言葉まで忘れてしまっていた。

[*prev][next#]

4/16ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!