・西野コンビ高三編2
ある日曜日、俺はCDでも買おうと町中に繰り出した。
シンちゃんも誘ったけれど、何をやらかしたのかお母さんにこってり絞られていて、「たとえキューちゃんでも今日は駄目よ!」と追い返されてしまった。
仕方なく一人でブラブラしていると、途中でクラスメイトに出会った。
「お、久野。今日は西山いねーの? 珍しいな」
「なっははは、まぁね」
そいつと適当に話をして別れようとしたところで、俺よりも背の高い男たちが、俺の肩にガシッと腕を回してきた。
「ひーさーの君。あっそびーましょ?」
クラスメイトがみるみる青ざめた。
「そこのキミ。西山の連絡先知ってる?」
「は、はい……でも」
「じゃ、連絡しておいて。この先のネストってバーにいるから、早く来いって。俺たち《シエル》の一員だから。名前くらい知ってるでしょ? 痛い目に遭いたくなかったらね、素直に言うこと聞いておきな?」
もしかしたら、端から見たらちょっとガラの悪い高校生同士がじゃれているようにしか見えなかったかもしれない。
でも、そいつらは手のひらに隠し持った小さなナイフで俺たちを脅していた。
俺が逃げたら、クラスメイトがヤバイ。こりゃさすがに逃げられないね。
バーに連れて行かれた俺は、椅子に縛りつけられた。
そこにいた男たちの大半は高校の先輩だった。ちょっと前に《シエル》に潰されて、義家の傘下に下ったヤツラ。真ん中にふんぞり返っているのは、確か林って名前だ。
林たちは、シンちゃんを賭けの対象にしていた。
「あいつ、何発で沈むかね」
「えれぇチビだからなぁ。下手したら一発じゃねーの?」
「少なくとも3発は堪えてもらわねーと、ストレス発散できねーよ」
「クソ生意気なガキが泣いて謝るまでちょっと手加減しながらやるか」
そんな会話が耳に入って、俺の血が沸騰するのがわかった。
全く、呑気が売りの俺なのにね。
「……西山がお前らなんか相手にするわけねーじゃん」
俺の声に、林たちが一斉に振り向いた。
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