・西野コンビ中三編2
芹沢はよく出入りしてるゲーセンで遊んでいた。
「おう、表出ろや、芹沢!」
「…………」
芹沢の操るキャラクターが、COMに負けた。不機嫌そうな顔で睨まれた。
シンちゃんの繰り出すパンチを、芹沢が次々とかわす。
こうやって端から見ると、シンちゃんと芹沢の身長差はすごい。未だに伸び悩んでるシンちゃんに比べ、「お前、本当に中学生か」と言いたくなる芹沢。
そんなアイツに臆さず挑んでいくシンちゃんは本当に勇気があると思う。
――とうとうシンちゃんの拳が、姿勢を低くした芹沢の頬にクリーンヒットした。だけど。
「……テメェ! 何のつもりだ! 手ェ抜きやがって!」
シンちゃんが芹沢に怒鳴った。
「これで最後だから。もうお前らともやんねぇ」
「はぁ?!」
「就職のためにも、ちゃんと高校は出ときてぇから」
うーわ、芹沢がまともなコト言ってる! つか、ちゃんと話したの初めてだよな。
「……西野。こないだはいきなり殴って悪かった」
芹沢は自分の鼻を指しながらそう言うと、その辺に放り投げていた上着を拾い、切れた唇を手の甲で拭いながら去っていった。
「……俺は西山だっつの。最後くれー、ちゃんと呼べよな」
シンちゃんはぶつくさ言いながら、空を仰いだ。
「ちぇっ、つまんねー。……勉強でもすっか」
「おっ、やる気出た?」
「いくらなんでも、勉強だけは芹沢に負けたくねーわ」
「東南は女の子のレベル高いってよー。ガーンバ!」
握り拳を作ると、シンちゃんは「待ってろよ、女子!」と雄叫びをあげた。
俺、ホントはもうちょっといい高校も行けるけどさ。やっぱシンちゃんいない学校なんてつまんないもんなぁ。ま、ハチコーは絶対ヤだけどね!
***
芹沢君が「西野」の名前を覚えていたのはレアケース。(間違ってるけど)
伝わるわけないけどねぇ、こんな友情。
(2011.10.22拍手)
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