・バカップル編2 俺と小山内先輩はサッカー部、太田先輩は(意外にも)剣道部で、放課後一人でしょんぼりと帰ったはずの芹沢サン。 サッカー部の練習を終えて帰ろうとすると、私服の芹沢サンが心配そうに校門あたりをウロウロしているのを発見して、小山内先輩が萌え死にかけてました。 「道場まで迎えに行けばいいじゃん!」 小山内先輩の言葉に、芹沢サンは「唐草に見つかると面倒だからいいよ……」と渋っていたのだけど、「太田君の袴姿、かわいいよ?」と言われて抵抗をやめました。 結局のところ、見たかったんですね、芹沢サン……。 3人で道場に行くと、既に練習は終わっていて剣道部員達は道場の拭き掃除中。 剣道部員は数が少なくて、小柄で真面目そうな人が多い気がします。ヤンキーの多いハチコーの中では珍しい。主将らしき人だけはやたら大きかったけどね。 眼鏡を外して手ぬぐいで髪を覆い、紺色の胴着のまま雑巾がけしていた太田先輩は、こちらに気がついてニコッと笑いました。 練習で上気した肌と、汗で首筋にはりつく髪の毛が相まってなかなかエロ可愛かったです。顔は普通なはずなのになー。なんでだろ。 これはよっぽどメロメロになってるだろうと横に立ってた芹沢サンを見ると、意外にも平然としてました。 っていうか、まさかまだ太田先輩のことを見つけてない? あれ? 太田先輩がトテトテと駆け寄ってきて、俺たちの目の前で袴姿を見せびらかすと、ようやくホッとした顔で太田先輩の頭をナデナデする芹沢サン。 っていうか、顔までペタペタ触って、めっちゃ至近距離で見てる。 ふ、二人の世界に入りすぎだって! 部員の人たちもめっちゃ見てんじゃん! 「……なかなか似合うんじゃないか」 「そうか? ありがとう。皆慈も興味あるなら剣道部に入ってみないか?」 「やだよ、めんどい」 「キミならレギュラー間違いないのにな。袴姿だって絶対似合うのに……。竹刀振る姿はきっと格好いいだろうな」 太田先輩にそう言われた途端、芹沢さんの顔がぶわっと赤く染まって、「うっせぇ。玄関で待ってるからな!」と言い捨てて、逃げるように去っていきました。 そこは照れるんだ……。 「いやー、あれは近々入部するね」 小山内先輩がそう言うと、太田先輩がフッと笑いました。 「唐草先生に勧誘を命じられている」 うわ、ちょっとこの人……。今の会話、計算でしたよ?! 案の定、翌日には入部届を書かされてましたけどね。 しばらくふてくされてた芹沢サンだったのに、太田先輩に頭をナデナデされるうちにトローンとした目に……。 太田先輩に弱すぎっっ! 「あの二人、アレで本当につき合ってないんですか」 「そうなんだよ、無自覚なんだよ。あ、そうだ、瀬名。太田君にちょっかいかけてさ、二人の仲を進展させてきてよ!」 「確実に芹沢サンに殺されますよねそれ! 学祭の時に来てた下僕サンに頼めばいいじゃないですか」 「下僕はもはや下僕以外の何者でもないんだよ……」 「げ、げぼくサン……」 そんなこんなで小山内先輩と俺は、無自覚バカップルを日々見守ってます! *** 彼らにとって、友情という名の防波堤は限りなく頑丈なのでした。 (2011.9.22拍手) [*prev][next#] [戻る] |