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違う過去 16
 芹沢が抱きついてきた瞬間、背後からカシャッと電子音が聞こえた。

「――僕もそのバイト入れるかなぁ?」

「え?」

「う、うわーっっ!!」

 振り向くと、自転車を片手で押しながら携帯を手にした小山内が立っていた。

 芹沢が胸を押さえながら動揺していた。

「お、おま……ど、どこから聞いてた?」

「へ? どこって……仕分けのバイトするって話?」

「あ、いや、それならいい」

 さすがに家庭の事情を小山内に聞かれるのは恥ずかしかったらしい。

「ところで、ヘアバン野郎ってこの間の人?」

「ああ。どうやら芹沢のことを調べてるらしくてな」

「それは不穏だねぇ。よし、決まり。僕もバイトする」

「そんなに空きあるのだろうか?」

「その辺は多分平気だろ。後で電話してみるけどよ。あ、履歴書だけは用意しろよ」

「了〜解〜」

 小山内はにっこり笑って携帯を閉じた。

「……ところで、何か用だった?」

 俺が小山内にそう尋ねると「たまたまだよ?」と答えた。

 しかし、俺には信じられなかった。何故なら、小山内がやたらと上機嫌だからだ。

 絶対キミ、写真撮ってたよな?

 多分、話も聞いてたよな?

 ――それを言ったら芹沢がヘコみそうなので言わないが。

「小山田見てると、何となくお前の姉貴思い出すんだよな……」

「ふむ。キミも徐々にわかってきたな」

「ついでに言っておくと、小山田じゃなくて小山内ですー」

 小山内がへらへら笑いながら修正した。



 そんなわけで、俺たちは翌日から三人でバイトにいそしむこととなった。



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あきゅろす。
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