違う過去 13
それから、芹沢は俺に家庭の事情をぽつりぽつりと話してくれた。
芹沢の両親は以前から芹沢に全く興味を持たず、中学時代に芹沢がグレたことにより、その関係に拍車がかかった。
しかし、中学卒業を目前に控え自分のやりたい道を真剣に考え始めた芹沢は、両親に頭を下げて進学を決めた。
その時の交換条件が、入学にかかる費用は自分で稼ぐこと、家から出て行くこと、生活費は自分で何とかすること。
つまり、完全に縁を切ることにしたらしい……。
芹沢は中学時代にバイトで貯めていた金を全て使い切り、進学と独立のために当てた。
しかし、蓋を開けてみれば、芹沢の両親が学校に金を振り込むことは一度もなかった。
彼らの中で、芹沢は既に「いない存在」にされていた。
芹沢が最近よく担任に呼ばれていたのは、お金の件で自宅に連絡しても全く取り合って貰えず、仕方なく本人の耳に入れることになったのだそうだ。
「授業料無料になったのはラッキーだったけどよ。諸経費と積立だけでも結構な額が必要なんだよな」
「奨学金で何とかならないのか」
「成績が足りねーのもあるけど、親が結構稼いでっから審査ではじかれる」
「そうか……」
「今後も授業料がずっとタダかどうかわかんねーんだろ?」
「政治が安定してないからな……」
「ぶっちゃけた話、お前んちにやっかいになれたおかげで毎月結構浮いてたんだ。ちょっとでも長く学校にいたいからな。休みの間にがっつり稼がせてもらう」
ずっと言えなかったことを言ったせいか、芹沢はどこかすっきりした顔で笑った。
「……。キミは立派だな」
「立派だったらグレてねーわ」
「一体何が気にくわないんだろうな。こんなにイイ子なのに」
「うあ、またそういうことを恥ずかしげもなく……。でも、ま、原因はわかってんだ」
芹沢は何てこともないように言った。
「俺、しょし、ってやつなんだとよ」
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